便潜血
便潜血とは?
便潜血とは、肉眼では確認できない微量の血液が便に混じっている状態を指します。
健康診断や大腸がん検診などで行われる「便潜血検査」は、消化管からの出血の有無を調べるために重要な検査です。
特に、大腸がんや大腸ポリープなどの疾患を早期発見する目的で実施されます。
便潜血が検出される場合、消化管のどこかで出血が起こっている可能性があります。
出血の原因はさまざまですが、そのまま放置すると重大な疾患が進行してしまうリスクもあるため、早期発見・早期治療が重要になってきます。
便潜血の原因
便潜血の主な原因は、消化管のどこかで出血が起こっていることです。具体的には、以下のような疾患が関係している可能性があります。
- 大腸がん:早期の大腸がんでは症状がほとんどないため、便潜血検査が重要なスクリーニング手段となります。
- 大腸ポリープ:良性のポリープでも出血を伴うことがあり、放置するとがん化することがあります。
- 痔(いぼ痔・切れ痔):肛門付近で出血することがあり、便潜血検査で陽性になる場合があります。
- 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病):腸の粘膜が炎症を起こし、出血することがあります。
- 感染性腸炎:細菌やウイルスによる感染が原因で腸の粘膜が傷つき、出血することがあります。
これらの疾患は、適切な検査や治療を受けることで早期に対応することが可能です。便潜血検査はあくまでスクリーニング検査の一つですが、陽性の結果が出た場合には精密検査を受けることが推奨されます。
便潜血検査の方法と仕組み
便潜血検査は、便の中に血液が含まれているかを調べる検査です。一般的に以下の2種類の方法があります。
1免疫法(現在主流)
- ヒトのヘモグロビン(血液の成分)を検出します。
- 食事の影響を受けにくく、精度が高いです。
- 日本の健康診断では「2日法(2回の便を採取)」が推奨されます。
2化学法(古い方式)
- ヘモグロビンの酸化反応を利用します。
- 食事の影響を受けやすく、精度が低いため現在はあまり使われていません。
現在の主流である免疫法は精度が高く、便潜血の有無をより正確に検出することが可能です。特に、健康診断やがん検診ではこの方法が採用されています。
便潜血陽性の意味とは?
便潜血検査で「陽性」と判定された場合、消化管のどこかで出血が起きている可能性がありますが、陽性=大腸がんというわけではありません。
陽性が出た場合の考えられるケース
1大腸がんや大腸ポリープが原因
精密検査(大腸カメラ)が必要になります。
2痔や腸の炎症が原因
症状に応じた治療が必要になります。
3一時的な出血(便秘や刺激の強い食べ物など)
再検査を行う場合もあります。
便潜血検査の陽性率は約5%であり、陽性の人の約5%が大腸がんであるとされています。そのため、陽性の結果が出た場合は、必ず精密検査を受けることが大切です。
便潜血検査の限界
便潜血検査は有用なスクリーニング検査ですが、以下のような限界があります。
偽陰性
(大腸がんがあっても陰性になることがある)
- 出血量が少ない場合、検出されない可能性があります。
偽陽性
(がんでなくても陽性になることがある)
- や一時的な炎症でも陽性になることがあります。
このため、便潜血検査だけで「異常なし」と判断せず、症状がなくても定期的な検査や大腸カメラ検査を受けることが推奨されます。
陽性だった場合の次のステップ
大腸カメラの流れ
1.事前診察
問診・検査の説明を行います。
2.検査前日
消化の良い食事を摂り、下剤を服用します。
3.検査当日
下剤を飲み腸内をきれいにし、大腸カメラを挿入して検査します。
4.結果説明
異常があれば組織を採取し、病理検査を実施します。
早期発見・早期治療ができれば、大腸がんは完治します。定期的な内視鏡検査を心掛けましょう。
最後に
便潜血検査で陽性となった場合は、放置せずに消化器内科を受診しましょう。当院では、AIを用いた大腸カメラによる精密検査を行っています。少しでも不安を感じたら、お気軽にご相談ください。
監修:仁愛堂クリニック 院長 小林俊一