潰瘍性大腸炎・クローン病
炎症性腸疾患(IBD)とは?
炎症性腸疾患(IBD)とは、消化管に炎症を引き起こす慢性疾患であり、潰瘍性大腸炎とクローン病があります。若年層での発症が増えており、日本国内の患者数も年々増加傾向にあります。これらの疾患は完治が難しく、適切な治療と生活管理によって症状を抑えることが重要です。
潰瘍性大腸炎とは?
潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に炎症が起こり、びらんや潰瘍が形成される疾患です。20代の若年層に発症することが多いですが、近年は60代以上の方の発症が増えてきています。炎症は大腸の内側(粘膜層)に限局し、直腸から連続的に広がる特徴があります。原因は明確に解明されていませんが、自己免疫の異常や遺伝的要因、腸内細菌叢の異常や、環境因子が関与すると考えられています。
潰瘍性大腸炎の主な症状
- 下痢や血便(慢性的な下痢が続き、血液が混じることが多い)
- 腹痛(特に左下腹部の痛みが特徴)
- 発熱(炎症が強い場合に発生)
- 体重減少や貧血(炎症が続くことで栄養吸収が低下)
- 倦怠感(慢性的な炎症による影響)
クローン病とは?
クローン病は、消化管のあらゆる部位(口腔から肛門まで)に炎症が起こる疾患で、特に小腸・大腸に多く見られます。10代から20代の発症が多く、炎症は腸管の全層(粘膜から漿膜まで)に及び、不連続性の病変(スキップ病変)が特徴です。原因は潰瘍性大腸炎と同じく明確に解明されておりません。
クローン病の主な症状
- 腹痛(特に右下腹部の痛みが多い)
- 下痢(非血性で水様性のことが多い)
- 発熱や倦怠感(慢性炎症による影響)
- 痔ろう・肛門病変(肛門周囲の腫れや膿瘍)
- 体重減少(栄養吸収不良の影響)
- 栄養障害(鉄・ビタミンB12・タンパク質などの不足)
潰瘍性大腸炎・クローン病の検査と診断
炎症性腸疾患(IBD)の診断には、以下のような検査が行われます。
潰瘍性大腸炎・クローン病の治療法
炎症性腸疾患の治療は、症状のコントロールと再発予防を目的としています。
1薬物療法
- 5-ASA製剤(メサラジン):軽症〜中等症の潰瘍性大腸炎の基本治療薬。
- ステロイド:重症例で使用(寛解後は徐々に減量)。
- 免疫調整薬(アザチオプリン・6-MP):長期管理のために使用。
- 生物学的製剤(抗TNF-α抗体・抗IL-12/23抗体・JAK阻害薬):難治性症例やステロイド依存例に適用。
2栄養療法(特にクローン病)
- 経腸栄養療法(成分栄養剤・エレンタール):消化管を休めるために使用。
- 低残渣食(腸への負担を減らす食事管理)。
3外科治療(手術)
- 潰瘍性大腸炎:重症例や合併症(穿孔・がん化)がある場合、大腸全摘術を行う。
- クローン病:狭窄や瘻孔が生じた場合、腸管切除術が必要となることがある。
日常生活の管理と予防
IBDは完治しない疾患のため、日常生活の管理が重要です。
1食事管理
- 低脂肪・低残渣食を意識する(腸への刺激を抑える)
- 高タンパク質の食品を取り入れる(体力維持)
- 発酵食品を適度に摂取する(腸内環境の改善)
- アルコールやカフェインを控える(腸の刺激を避ける)
2ストレス管理
- 過度なストレスは症状悪化の原因となるため、リラックスできる時間を確保する
- 適度な運動を取り入れる(ヨガ・ウォーキングなど)
3定期的な受診
- 寛解期でも定期的に内視鏡検査を受け、病変の変化をチェック
- 症状の悪化を感じたらすぐに医療機関を受診する
最後に
潰瘍性大腸炎とクローン病は慢性的な炎症性腸疾患ですが、適切な治療と生活習慣の改善により、症状をコントロールすることが可能です。しかし炎症性腸疾患患者さまの発がんリスクは一般人の50~100倍とも言われており、がんの早期発見の為にも定期的な内視鏡検査が進められています。また過敏性腸症候群(IBS)とも関連していることもあり、下血がなくとも下痢症状が頻回であれば、1度は内視鏡検査を受けるようにしましょう。症状が気になる方は、早めに当院までご相談下さい。
監修:仁愛堂クリニック 院長 小林俊一