便秘

便秘とは?

便秘とは、一般的に便が硬くなり、排便回数が週3回以下と少ない状態を指します。さらに「3日以上便が出ない」「毎日排便があっても残便感が強い」「排便に時間がかかる」といった場合も便秘に含まれます。便秘は単なる不快感にとどまらず、腹部膨満感(お腹の張り)・腹痛食欲不振・肌荒れなど、全身にさまざまな影響を及ぼすことがあります。特に慢性的な便秘は生活の質を大きく低下させ、長期的には痔や大腸疾患のリスクを高めることもあるため注意が必要です。

便秘の主な原因

便秘の原因は、大きく分けて以下の4つのカテゴリーに分類されます。

1食生活の影響

  • 食物繊維の不足
    野菜や果物、海藻、きのこ類などに多く含まれる食物繊維は、便のかさを増やし腸の動きを促す大切な栄養素です。摂取が不足すると便の量が減り、腸のぜん動運動(便を押し出す働き)が弱まってしまいます。その結果、便秘になりやすく、お腹の張りや不快感の原因にもつながります。特に現代の食生活では、パンや麺類など炭水化物中心になりやすく、意識しないと食物繊維が不足しやすい点に注意が必要です。

  • 水分不足
    腸の中に十分な水分があることで便が柔らかくなり、スムーズに排出されます。しかし水分が不足すると便が硬くなり、排出が難しくなります。水分不足は夏場の汗や、運動、入浴後などにも起こりやすいため、こまめな水分補給が重要です。コーヒーやお茶だけでなく、水や白湯をしっかり飲むことを心がけましょう。

  • 脂質不足
    脂質は「太る原因」として敬遠されがちですが、実は腸の潤滑油のような役割を持ち、適度な摂取は便の通りを良くしてくれます。脂質が極端に不足すると腸の滑りが悪くなり、便が硬くなったり、排便が滞りやすくなります。オリーブオイルや青魚、ナッツなど良質な脂質を適度に摂ることが大切です。 

  • 過剰なカフェイン・アルコール摂取
    コーヒーや緑茶、エナジードリンクなどに含まれるカフェインや、お酒に含まれるアルコールには利尿作用があります。過剰に摂取すると体内の水分が排出されやすくなり、腸内の水分も不足して便が硬くなる原因となります。嗜好品として適量を楽しむことは構いませんが、飲みすぎには注意しましょう。特にアルコールの飲みすぎは脱水を招きやすいため、便秘や下痢の原因となることがあります。

  • 発酵食品の不足
    腸内環境を整えるためには、乳酸菌やビフィズス菌を含む発酵食品が欠かせません。ヨーグルトや納豆、味噌、キムチなどを習慣的に摂ることで腸内の善玉菌が増え、腸の動きが活発になります。逆にこれらが不足すると、悪玉菌が優位になり腸内環境が乱れ、便秘や下痢を繰り返しやすくなります。毎日の食生活に意識的に取り入れることが、便秘予防にも健康維持にもつながります。

2運動不足

  • 腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)の低下
    腸は食べ物を消化・吸収した後、残ったものを便として体外へ運ぶために「ぜんどう運動」という動きをしています。この動きが弱まると便が腸の中で停滞しやすくなり、便秘の大きな原因となります。適度な運動は腸を刺激し、ぜんどう運動を活発にする効果があります。ウォーキングやストレッチ、軽い筋トレでも腸の働きは良くなります。日常生活の中で体を動かす習慣を取り入れることが大切です。

  • 腹筋の低下
    排便の際には「腹圧」をかけることが必要です。腹筋がしっかりしていれば、腸に力を伝えて便をスムーズに押し出すことができます。しかし、運動不足や加齢により腹筋が弱くなると腹圧がかけづらくなり、便を出すのに時間がかかったり、排便困難を感じるようになります。特に高齢の患者様や普段あまり運動をしない方は、便秘が慢性化しやすい傾向にあります。腹筋を鍛える運動を無理のない範囲で取り入れることで、便秘の改善・予防につながります。

  • 長時間の座り仕事
    長時間同じ姿勢で座り続けると、腸の動きが停滞し血流も悪くなります。その結果、便の通過が遅くなり、硬くて排出しにくい便ができやすくなります。デスクワークの多い方は1時間に1度は立ち上がって軽く体を動かしたり、トイレに行く習慣をつけることが便秘予防に役立ちます。エレベーターではなく階段を使う、昼休みに少し散歩をするなど、生活の中に小さな工夫を取り入れるだけでも腸の働きは改善します。

3ストレス・自律神経の乱れ

  • ストレスが腸の働きを抑制:交感神経が優位になると腸の動きが鈍くなり、便秘を引き起こします。
  • 不規則な生活:寝不足や不規則な食生活が腸のリズムを崩します。
  • 旅行や環境の変化:慣れない環境では腸の働きが乱れ、便秘を引き起こすことがあります。

4病気・薬の影響

  • 大腸がん・腸閉塞
    大腸がんや腸閉塞は、腸の通過が物理的に妨げられることで便の流れが滞り、強い便秘を引き起こすことがあります。特に大腸がんでは、がんが大腸内で狭窄(きょうさく)を起こし、便の通過が難しくなるのが特徴です。腸閉塞の場合は、腸管が塞がってしまうため、便秘だけでなく腹痛や吐き気、嘔吐などの症状も伴うことが多く、早期の診断と治療が必要な重篤な病気です。便秘に加えて血便や体重減少などの症状がある場合には、早めに消化器内科を受診することが大切です。

  • 過敏性腸症候群(IBS)
    過敏性腸症候群は、ストレスや生活習慣の乱れがきっかけで腸の動きが不安定になる病気です。腸のぜん動運動が強くなりすぎると下痢が、弱くなると便秘が起こり、これらを繰り返すのが特徴です。お腹の張りや痛みを伴うこともあり、日常生活に大きな影響を与えます。比較的若い世代にも多くみられ、「便秘と下痢を交互に繰り返す」症状はIBSを疑うサインです。ストレス管理や食事改善、場合によっては薬の治療が必要になります。

  • 甲状腺機能低下症
    甲状腺ホルモンは体の新陳代謝をコントロールしている重要なホルモンです。このホルモンが不足すると代謝が低下し、体全体の働きが遅くなります。その影響は腸にも及び、腸の動きが鈍くなることで便秘が生じます。甲状腺機能低下症では便秘のほかにも、体のだるさ、寒がり、むくみ、体重増加、抜け毛などの症状が見られることがあり、気づかれにくい病気でもあります。長く続く便秘にこれらの症状が伴う場合には、早めの検査が勧められます。

  • 糖尿病
    糖尿病を長年患っている患者様では、血糖値が高い状態が続くことで「糖尿病性神経障害」と呼ばれる合併症が起こることがあります。特に自律神経に障害が及ぶと、腸の動きが低下して便秘になりやすくなります。また、糖尿病は腎臓や血管にも影響を与えるため、体のバランスが崩れて消化管の働きにも支障が出やすくなります。「糖尿病のコントロールが不十分で便秘が続く」場合は、合併症のサインの可能性もあるため、主治医への相談が大切です。

  • 薬剤性便秘
    便秘は病気そのものだけでなく、服用している薬の副作用としても起こることがあります。特に鎮痛薬(オピオイド)、抗うつ薬、抗不安薬、降圧薬、鉄剤などは便秘を引き起こしやすい薬として知られています。薬による便秘は、薬の種類や体質によって現れ方が異なるため、自己判断で服薬を中止せず、必ず医師に相談することが重要です。薬の変更や下剤の併用などで改善できるケースも多くあります。

便秘の検査と診断

便秘の原因を特定するために、以下のような検査が行われます。

  • 問診・診察:生活習慣や排便状況について詳しく確認します。
  • 大腸カメラ検査(大腸内視鏡検査):腸の炎症や腫瘍がないかを確認します。 当院では鎮静剤を使用した大腸カメラ検査を行っています。
  • 血液検査:甲状腺機能低下症や糖尿病などの全身疾患が便秘の原因でないか調べます。
  • 便潜血検査:大腸がんのリスクをチェックするために行われることがあります。

便秘の治療法

便秘の治療は、原因に応じて以下の方法を組み合わせて行います。

1食事療法

  • 食物繊維を積極的に摂取する:
    野菜、果物、海藻、豆類、きのこ類には豊富に含まれています。たとえば、サラダや味噌汁に野菜を多めに入れる、間食に果物やナッツを選ぶなど、日常生活に取り入れやすい工夫が効果的です。現代の食生活では炭水化物や加工食品が中心になりやすく、食物繊維が不足しやすいため、意識的な摂取を心がけましょう。

  • 水分補給をしっかり行う:
    腸内に十分な水分があることで便は柔らかくなり、スムーズに排出されます。水分が不足すると便が硬くなり、便秘の原因になります。そのため、1日に1.5リットル以上を目安に水分を摂ることが推奨されます。特に水や白湯が望ましく、カフェインやアルコール飲料は利尿作用で逆に水分を失いやすいため注意が必要です。朝起きたときにコップ一杯の水を飲む、食事のときに必ず水を添えるなど、生活の中に習慣として取り入れるとよいでしょう。

  • 発酵食品を取り入れる:
    ヨーグルト、納豆、味噌、キムチ、ぬか漬けなどの発酵食品には、腸内環境を整える善玉菌(乳酸菌やビフィズス菌など)が多く含まれています。

  • オリゴ糖を活用する:
    オリゴ糖は腸内の善玉菌のエサとなり、善玉菌を増やして腸内環境を改善する効果があります。便通を整えるサポートだけでなく、腸内フローラのバランスを保つことで健康全体に良い影響を与えます。オリゴ糖はバナナや玉ねぎ、大豆製品など自然の食品にも含まれていますし、市販のオリゴ糖シロップを利用するのも一つの方法です。砂糖の代わりにオリゴ糖を使えば、甘味を楽しみながら腸内環境の改善も期待できます。

2運動療法

  • 適度な運動を習慣化する:ウォーキングや軽いジョギングが腸の動きを活発にします。
  • 腹筋を鍛える:腹筋運動やストレッチを取り入れ、排便をスムーズにします。
  • 腸マッサージを行う:お腹を「の」の字にマッサージすることで腸の動きを促進します。

3薬物療法

便秘薬には主に以下の種類があり、それぞれ異なる効果を持っています

浸透圧性下剤

腸内の水分量を増加させ、便を軟化させて排便回数を増やします。

  • 塩類下剤(酸化マグネシウム):安全性が高く、効果はマイルドです。
  • 糖類下剤(ラクツロースNF®):内服後5~6時間で効果が現れます。緩やかに効果を発揮し安全性の高い薬剤です。
  • ポリエチレングリコール(モビコール®):小児から高齢者まで適応があり、便に水を含ませて膨らませる効果があります。
上皮機能変容薬

小腸上皮細胞に作用して腸液分泌を促し、排便を促進します。

  • アミティーザ:腸管の神経にも作用し、腹部不快感を改善します。
  • リンゼス:便秘型の過敏性腸症候群に適しています。
胆汁酸トランスポーター阻害薬
  • グーフィス:便を柔らかくし、腸の動きを促進する二重の効果があります。
刺激性下剤

腸管を直接刺激して蠕動運動を促進します。効果が出るまで数時間かかり、長期使用で耐性が出る可能性があります。

  • アントラキノン系(センノシド、プルゼニド):眠前に服用し、翌朝効果が出ます。
  • ジフェノール系(ラキソベロン、ピコスルファート):液体タイプもあり、用量調整が細かく可能です。
漢方薬

大黄を含む様々な種類があります(大建中湯・桂枝加芍薬湯・大黄甘草湯・桃核承気湯など)。体質に合わせた便秘改善に効果があります。

外用薬
  • 炭酸水素ナトリウム(新レシカルボン坐剤®):10-30分で効果が現れます。
  • グリセリン浣腸液:効果は強いですが、使用には注意が必要です。腸閉塞などが疑われる場合は使用できません。

便秘薬の選択は、患者の症状や状態に応じて適切に行う必要があります。また、長期使用による依存性や耐性の問題を避けるため、特に刺激性下剤は必要時のみの使用が推奨されます。便秘の根本的な原因に対処するため、生活習慣の改善や十分な水分摂取、食物繊維の摂取、適度な運動なども重要です。

受診が必要な便秘のサイン

以下のような方は医療機関の受診をお勧めいたします。

  • 2週間以上、便秘が続いている
  • 強い腹痛や膨満感がある
  • 便に血が混じる(血便)
  • 体重減少が見られる
  • 便が細かったり、コロコロした便である
  • 便が少ししか出ない、または残便感がある
  • 市販薬を使用しても改善しない

最後に

便秘は日常的に起こる症状ですが、慢性化すると生活の質を低下させるだけでなく、重大な病気が隠れている可能性もあります。食生活の改善や適度な運動を取り入れることで、多くの場合は改善が期待できますが、便秘が続く場合や不安がある方は、お気軽に消化器内科を受診してください。

当院ではほとんど眠った状態で受けることのできる鎮静剤を使用した内視鏡検査を行っています!

経験豊富な医師は苦痛の少ない内視鏡検査を実施いたします。
過去に大腸カメラ胃カメラの検査で痛みや苦しさを感じた方や、内視鏡検査に対してネガティブなイメージをお持ちの方も、安心して検査を受けていただけるよう、様々な工夫を凝らしていております。

 

監修:仁愛堂クリニック 院長 小林俊一

仁愛堂クリニック 診療時間 TEL:0120-905-728 お電話でのお問い合わせはこちら 内視鏡検査専用TEL:0120-905-728
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