便秘
便秘とは?
便秘とは、排便回数が減少し、排便が困難になる状態を指します。
一般的には、週に3回未満の排便や、便が硬く出しにくい場合に便秘と診断されます。便秘は一時的なものから慢性化するものまであり、放置するとさまざまな健康リスクを伴うため、適切な対策が必要です。
便秘の主な原因
便秘の原因は、大きく分けて以下の4つのカテゴリーに分類されます。
1食生活の影響
- 食物繊維の不足:野菜や果物の摂取が不足すると、便のかさが減り腸の動きが低下します。
- 水分不足:腸内の水分が不足すると便が硬くなり、排出しづらくなります。
- 脂質不足:適度な脂質は腸の滑りを良くし、排便をスムーズにします。
- 過剰なカフェイン・アルコール摂取:利尿作用があり、体内の水分が不足することで便が硬くなります。
- 発酵食品の不足:ヨーグルトや納豆などの腸内環境を整える食品が不足すると、腸の動きが低下します。
2運動不足
- 腸の蠕動運動の低下:適度な運動は腸の動きを活発にします。特にデスクワークの多い人は便秘になりやすい傾向があります。
- 腹筋の低下:排便時に必要な腹圧が弱まると、便を押し出しにくくなります。
- 長時間の座り仕事:腸の動きが停滞し、便秘の原因になります。
3ストレス・自律神経の乱れ
- ストレスが腸の働きを抑制:交感神経が優位になると腸の動きが鈍くなり、便秘を引き起こします。
- 不規則な生活:寝不足や不規則な食生活が腸のリズムを崩します。
- 旅行や環境の変化:慣れない環境では腸の働きが乱れ、便秘を引き起こすことがあります。
4病気・薬の影響
- 大腸がん・腸閉塞:腸の通過が妨げられることで便秘が起こる場合があります。
- 過敏性腸症候群(IBS):ストレスなどで腸の動きが不安定になり、便秘や下痢を繰り返すことがあります。
- 甲状腺機能低下症:新陳代謝が低下し、腸の動きが遅くなることがあります。
- 糖尿病:糖尿病に長年罹患していると末梢神経障害を起こします。自律神経が障害されると腸の動きが悪くなり便秘になる場合があります。
- 薬剤性便秘:鎮痛剤・抗うつ薬・降圧薬の副作用として便秘が発生することがあります。
便秘の検査と診断
便秘の治療法
便秘の治療は、原因に応じて以下の方法を組み合わせて行います。
1食事療法
- 食物繊維を積極的に摂取する:野菜・果物・海藻・豆類などをバランスよく摂る。
- 水分補給をしっかり行う:1日1.5L以上の水分を意識して摂る。
- 発酵食品を取り入れる:ヨーグルト・納豆・キムチなどを摂取し、腸内環境を整える。
- オリゴ糖を活用する:腸内の善玉菌を増やし、便秘の改善をサポート。
2運動療法
- 適度な運動を習慣化する:ウォーキングや軽いジョギングが腸の動きを活発にします。
- 腹筋を鍛える:腹筋運動やストレッチを取り入れ、排便をスムーズにします。
- 腸マッサージを行う:お腹を「の」の字にマッサージすることで腸の動きを促進します。
3薬物療法
便秘薬には主に以下の種類があり、それぞれ異なる効果を持っています
浸透圧性下剤
腸内の水分量を増加させ、便を軟化させて排便回数を増やします。
- 塩類下剤(酸化マグネシウム):安全性が高く、効果はマイルドです。
- 糖類下剤(ラクツロースNF®):内服後5~6時間で効果が現れます。緩やかに効果を発揮し安全性の高い薬剤です。
- ポリエチレングリコール(モビコール®):小児から高齢者まで適応があり、便に水を含ませて膨らませる効果があります。
上皮機能変容薬
小腸上皮細胞に作用して腸液分泌を促し、排便を促進します。
- アミティーザ:腸管の神経にも作用し、腹部不快感を改善します。
- リンゼス:便秘型の過敏性腸症候群に適しています。
胆汁酸トランスポーター阻害薬
- グーフィス:便を柔らかくし、腸の動きを促進する二重の効果があります。
刺激性下剤
腸管を直接刺激して蠕動運動を促進します。効果が出るまで数時間かかり、長期使用で耐性が出る可能性があります。
- アントラキノン系(センノシド、プルゼニド):眠前に服用し、翌朝効果が出ます。
- ジフェノール系(ラキソベロン、ピコスルファート):液体タイプもあり、用量調整が細かく可能です。
漢方薬
大黄を含む様々な種類があります(大建中湯・桂枝加芍薬湯・大黄甘草湯・桃核承気湯など)。体質に合わせた便秘改善に効果があります。
外用薬
- 炭酸水素ナトリウム(新レシカルボン坐剤®):10-30分で効果が現れます。
- グリセリン浣腸液:効果は強いですが、使用には注意が必要です。腸閉塞などが疑われる場合は使用できません。
便秘薬の選択は、患者の症状や状態に応じて適切に行う必要があります。また、長期使用による依存性や耐性の問題を避けるため、特に刺激性下剤は必要時のみの使用が推奨されます。便秘の根本的な原因に対処するため、生活習慣の改善や十分な水分摂取、食物繊維の摂取、適度な運動なども重要です。
受診が必要な便秘のサイン
最後に
便秘は日常的に起こる症状ですが、慢性化すると生活の質を低下させるだけでなく、重大な病気が隠れている可能性もあります。食生活の改善や適度な運動を取り入れることで、多くの場合は改善が期待できますが、便秘が続く場合や不安がある方は、お気軽に消化器内科を受診してください。
監修:仁愛堂クリニック 院長 小林俊一