胃がん
胃がんとは?
胃がんは、胃の粘膜に発生する悪性腫瘍で、日本ではがんによる死亡原因の上位を占めています。特に50歳以上の人に多く発症しますが、近年では若年層の発症も見られます。胃がんは早期に発見・治療すれば高い確率で完治が可能ですが、進行すると周囲の臓器への転移リスクが高まり、治療の選択肢が限られることがあります。
胃がんの主な症状
胃がんは初期の段階では自覚症状がほとんどありませんが、進行するにつれて以下の症状が現れることがあります。
- 胃の不快感や痛み(食後に特に感じることが多い)
- 食欲不振や早期満腹感(少量の食事でもすぐに満腹になる)
- 吐き気や嘔吐
- 黒色便
- 体重減少
- 貧血(顔色が悪くなる・めまい)
胃がんの原因とリスク要因
胃がんの発症には、以下の要因が関与すると考えられています。
- ピロリ菌感染:胃がんの最大のリスク要因。長期間の感染により慢性胃炎が引き起こされ、がん化のリスクが高まる。
- 食生活の影響:塩分の多い食品(漬物、加工肉)、燻製食品、アルコールの過剰摂取がリスクを高める。
- 喫煙:たばこに含まれる有害物質が胃粘膜を傷つけ、がんの発生リスクを高める。
- 遺伝的要因:胃がんの家族歴がある場合、発症リスクが高まる。
- 慢性胃炎や胃ポリープ:ピロリ菌感染に伴う慢性胃炎が続くと、胃がんの発生確率が上昇。
胃がんの検査と診断
胃がんの早期発見には、定期的な検査が不可欠です。
- 胃カメラ検査(胃内視鏡検査):最も確実な診断方法です。胃の内部を直接観察し、異常があれば生検(病理組織検査)を行います。
当院では鎮静剤を使用した苦痛の少ない胃カメラ検査を行っています。 - バリウム検査(胃X線検査):造影剤を用いたX線検査です。胃の形状変化や腫瘍の有無を確認することができます。影絵として見る為、平坦ながんの見落としや、被爆のリスクがあります。また確定診断には別途胃内視鏡検査を行う必要があります。
- 腫瘍マーカー検査:CEA、CA19-9などの数値を測定し、がんの可能性を評価します。早期がんでは上昇しないため、主に進行がんの治療効果判定と、治療後の再発確認のために測定します。
- CT・MRI検査:がんの進行度や転移の有無を調べるために使用されます。
胃がんの治療法
胃がんの治療は、がんの進行度や患者の状態によって異なります。
1内視鏡的治療(早期がん)
- 内視鏡的粘膜切除術(EMR):小さながんを内視鏡で切除。
- 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD):粘膜下層まで広がったがんを内視鏡で一括切除。
2外科手術(進行がん)
- 胃部分切除術:がんがある部分の胃のみを切除。
- 胃全摘術:胃全体を切除し、食道と小腸をつなぐ。
- リンパ節郭清:がんが転移しやすいリンパ節を同時に切除。
3化学療法(抗がん剤治療)
- 術後補助化学療法:再発予防のため、手術後に抗がん剤を使用。
- 進行・転移がんの治療:TS-1、FOLFOX、分子標的薬(トラスツズマブなど)を使用。
4放射線療法(進行がんや転移のある場合に使用)
上記のような胃がんの治療法はクリニックでは対応できないために、病気の進行具合によっては病院等の連携医療機関を紹介します。
胃がんの予防法
胃がんは、生活習慣の改善によって予防できる可能性があります。
- ピロリ菌の除菌(感染が確認されたら早期に治療する)
- 塩分を控えたバランスの取れた食生活(新鮮な野菜・果物を多く摂取する)
- 禁煙・節酒を心がける
- 定期的な胃内視鏡検査を受ける(特に40歳以上の方は推奨)
受診のタイミング
以下の症状がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。
- 胃痛や胃の不快感が長期間続く。
- 黒色便が見られる。
- 食欲が落ち、体重が急に減少した。
- 早期満腹感があり、食事量が減っている。
- 家族に胃がんの既往歴がある。
最後に
胃がんは、早期発見と適切な治療によって高い確率で治癒が可能な病気です。特にピロリ菌感染がリスク要因となるため、早期の検査と除菌治療が推奨されています。定期的な胃カメラ検査(胃内視鏡検査)を受け、リスクを減らしましょう。
胃がんに関する不安がある方や、症状が気になる方は、お気軽に当院までご相談下さい。
監修:仁愛堂クリニック 院長 小林俊一