吐き気

吐き気とは?

吐き気とは、胃の不快感やむかつきを感じ、嘔吐しそうな状態になる症状を指します。
多くの人が経験する症状ですが、原因はさまざまであり、一過性のものから重大な病気のサインとなる場合まであります。適切な知識を持ち、原因を正しく理解し、適切な対処をすることが重要です。

吐き気の主な原因

吐き気の原因は、以下のように分類されます。

1消化器系の疾患

  • 胃炎・胃潰瘍:似て非なる病態とその進行
    胃炎と胃潰瘍はともに胃の粘膜に炎症や不調をきたす疾患ですが、その病態には明確な違いがあります。胃炎は胃の粘膜に炎症が起きている状態を指し、その進行した形態が胃潰瘍です。胃潰瘍は、炎症がさらに深まり、胃の粘膜や壁が深くえぐられて欠損した状態を指します 。
    胃炎には、突如として激しい症状が現れる「急性胃炎」と、長期にわたって炎症が続き、慢性的な不調をもたらす「慢性胃炎」の2つのタイプがあります。急性胃炎は、ウイルス感染、ストレス、暴飲暴食、過度の飲酒、アニキサスなどによって突然発症することが多く、突然の激しい胃痛、吐き気、膨満感といった症状を伴い、中には動けなくなるほどの激痛を訴える患者もいます 。
    一方、慢性胃炎は、多くの場合、ヘリコバクター・ピロリ菌の長期感染によって引き起こされ、激しい痛みはなく、なんとなくの不調が長期間にわたって続きます。自覚症状がないまま進行しているケースも少なくありません 。

  • 逆流性食道炎:
    胃の中の胃酸が食道へ逆流し、食道粘膜に炎症を引き起こす病気です。食道には胃酸から身を守る機能がないため、この逆流によって様々な不快な症状が引き起こされます。典型的な症状は、みぞおちの上が焼けるような胸やけや、酸っぱいものがこみ上げてくる呑酸(どんさん)です 。その他にも、胃もたれ、げっぷ、腹部膨満感、吐き気、胸の詰まるような痛みなどが現れます 。腸閉塞(ちょうへいそく):何らかの原因で腸が詰まってしまい、食べ物や消化液が先に進めなくなる状態です。強い腹痛とともに、吐き気や嘔吐を繰り返すのが特徴です。

  • 胆石症(たんせきしょう)・胆嚢炎(たんのうえん):
    胆石症は、肝臓で生成される胆汁が固まり、「石」となって胆嚢や胆管にできる病気です。通常は無症状であることが多いですが、胆石が胆管を塞ぐと、胆汁の流れが悪くなり、突然の激しい痛み(胆石発作)を引き起こします 。この痛みは、みぞおちから右上腹部にかけて現れ、しばしば右肩や背中に放散することが特徴です 。激しい痛みに加えて、吐き気や嘔吐、胃もたれ、食欲不振、腹部膨満感といった症状も伴います 。 
    さらに、胆石によって胆汁の流れが完全に滞ると、胆嚢内で細菌感染が起こり、「胆嚢炎」を併発することがあります。胆嚢炎を発症すると、右上腹部の痛みに加えて、発熱や悪寒、そして黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)が出現し、全身状態が悪化します 。

2脳・神経系の疾患

  • 片頭痛:
    頭部の片側あるいは両側に「ズキンズキン」と脈打つような強い痛みが特徴的な頭痛の一種です 。しばしば、光や音に過敏になる症状や、吐き気、嘔吐を伴うことが知られています 。この痛みは、身体を動かすことで悪化する傾向があります。

  • 脳卒中(脳梗塞・脳出血):
    脳の血管に突然の異変が生じる緊急性の高い疾患です。その病態は大きく3つに分類されます。一つは、脳の血管が血栓で詰まることで、その先の脳細胞に血液が供給されなくなる「脳梗塞」 。二つ目は、脳内の細い血管が破れて出血する「脳出血」 。そして三つ目は、脳の表面にある太い血管にできた動脈瘤が破裂して起こる「くも膜下出血」です 。脳出血の主な原因は高血圧性であることが多く、くも膜下出血は脳動脈瘤の破裂が原因とされます。一方、脳梗塞は心臓の不整脈(心房細動)や動脈硬化が主な原因となります

  • メニエール病:
    突然始まるグルグルと回るような激しいめまいに加え、耳鳴り、難聴、耳の閉塞感といった聴覚症状を同時に伴うのが特徴です 。このめまいは、短くて10分程度、長くて数時間程度持続することが多いとされています 。最も重要な特徴は、これらの発作が「不規則に反復する」点です 。  この病気の根本的な原因は、耳の奥にある内耳にリンパ液が過剰に溜まり、水ぶくれの状態になる「内リンパ水腫」にあると考えられていますが、なぜこの水腫が起こるのかは不明です 。ストレスや疲労、睡眠不足、気圧の変化、さらには几帳面な性格が発症に関与しているとされています 。

  • 自律神経失調症:
    心臓の動きや血圧、消化機能などを調整する自律神経のバランスが崩れることで、身体のさまざまな部位に多岐にわたる不調が現れる状態です。主な症状には、慢性的な疲労、全身のだるさ、めまい、頭痛、動悸、不眠、胃腸の不調(下痢や便秘)、イライラ、不安感などが挙げられます 。

3内分泌・ホルモンの異常

  • 妊娠悪阻(つわり):妊娠初期にホルモンの影響で吐き気や嘔吐が起こる症状です。個人差が大きく、食事が摂れないほど重い場合は、点滴などの治療が必要になることもあります。

  • 甲状腺機能亢進症(バセドウ病):甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気です。代謝が異常に活発になり、吐き気のほか、動悸、多汗、体重減少などの症状が現れます。

  • 糖尿病性ケトアシドーシス糖尿病の治療が不十分な場合に起こる、命に関わる合併症です。血糖値が急激に上がり、強い吐き気や腹痛、意識障害を伴うことがあります。

  • 副腎不全:ホルモン分泌の低下によって吐き気が生じることがあります。

4ストレス・精神的要因

  • 過敏性腸症候群(IBS):ストレスが原因で腸の動きが乱れ、腹痛を伴う下痢や便秘を繰り返す病気です。吐き気を伴うこともあります。

  • うつ病・不安障害:精神的な緊張や不安が慢性的に続くことで、自律神経が乱れ、吐き気を感じる場合があります。

  • パニック障害:突然、動悸や息苦しさ、めまいとともに、強い吐き気を伴うパニック発作が起こります。

5薬剤や食事の影響

  • 薬の副作用:抗生物質、痛み止め、抗がん剤などは、吐き気を引き起こす代表的な薬です。もし、薬を飲んで吐き気が現れた場合は、自己判断で中止せず、医師や薬剤師に相談してください。

  • 食中毒:細菌やウイルスがついた食べ物を口にすると、吐き気や激しい嘔吐、下痢が起きます。

  • アルコールやカフェインの過剰摂取:アルコールは胃の粘膜を刺激し、カフェインは胃酸の分泌を促すため、どちらも摂りすぎると吐き気を引き起こすことがあります。

吐き気の検査と診断

吐き気の原因を特定するために、以下のような検査が行われます。

  • 血液検査:感染症やホルモン異常を調べます。
  • 腹部超音波検査(エコー):胆石や肝臓の異常をチェックします。
  • 内視鏡検査(胃カメラ大腸カメラ:消化管の異常を詳しく観察します。

吐き気の治療法

吐き気の治療法は、原因によって異なります。

1薬物療法

吐き気の原因に合わせて、以下のようなお薬を処方します。

 

  • 制吐剤(ドンペリドン・メトクロプラミド):胃腸の動きを活発にして、吐き気を抑えるお薬です。食べすぎや飲みすぎ、胃の不調による吐き気に効果的です。

  • 胃酸抑制剤(PPI・H2ブロッカー):胃酸の分泌を抑えるお薬です。胃酸の逆流によって食道が炎症を起こし、吐き気や胸焼けにつながる場合(逆流性食道炎)に効果があります。

  • 抗不安薬・抗うつ薬:ストレスや心因性の要因によって自律神経が乱れ、吐き気が引き起こされることがあります。これらの薬は、心の状態を落ち着かせることで吐き気を和らげます。

  • 抗ヒスタミン薬:乗り物酔いやアレルギー反応による吐き気に用いられます。

  • 漢方薬:西洋薬とは異なるアプローチで、体全体のバランスを整えることで吐き気を改善します。六君子湯(りっくんしとう)などが代表的です。

    当院では、患者さんの症状や体質に合わせて、最も適したお薬を処方しています。

2生活習慣の改善

  • 食事の工夫:脂っこいもの、香辛料などの刺激物、アルコールは胃に負担をかけるため、避けるようにしましょう。消化の良いもの(おかゆ、うどん、煮物など)を少量ずつ、ゆっくりと食べることを心がけてください。

  • 水分補給:吐き気があるときは脱水症状になりやすいため、こまめな水分補給が大切です。一度に大量に飲むのではなく、少しずつ口に含むようにしましょう。

  • ストレス管理:ストレスは自律神経のバランスを乱し、吐き気の原因となることがあります。リラックスできる時間を作り、趣味や運動などで気分転換をすることが効果的です。

  • 睡眠の質を向上させる:十分な睡眠は、体の調子を整える基本です。規則正しい生活を送り、質の良い睡眠をとることで、自律神経の働きを安定させることができます。

最後に

不安を抱えたままでいる必要はありません。


吐き気は一時的な体調不良から、時に命に関わる重篤な病気のサインまで、様々な可能性を秘めた症状です。

原因がわからないまま吐き気が長引く場合や日常生活に支障をきたしている場合は決して一人で悩まず医療機関を受診してください 。  

診察時に漠然とした不安を抱えている場合は、事前に相談したいことをメモにまとめておくことが有効です 。

 

「苦しい」「辛い」というイメージから、検査を躊躇される方も少なくありません。  

当院では、患者さんの検査に対する恐怖や不安という感情的な障壁を取り除くため、鎮静剤を使用した

「ほとんど眠った状態での胃カメラ検査」に対応しています 。

鎮静剤を使用することで、多くの患者さんが検査で最も苦痛に感じる嘔吐反射や不快感を大幅に軽減できます 。

これは単に「楽な検査」を提供するだけでなく、患者さんの苦痛に深く寄り添い、安全性を第一に考えているという当院の姿勢を示すものです。

経験豊富な医師は苦痛の少ない内視鏡検査を実施いたします。
過去に大腸カメラ胃カメラの検査で痛みや苦しさを感じた方や、内視鏡検査に対してネガティブなイメージをお持ちの方も、安心して検査を受けていただけるよう、様々な工夫を凝らしていております。

 

監修:仁愛堂クリニック 院長 小林俊一

仁愛堂クリニック 診療時間 TEL:0120-905-728 お電話でのお問い合わせはこちら 内視鏡検査専用TEL:0120-905-728
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