疾患のお話し「頸部エコーで何がわかるか?」
2025.05.16更新
【頸部エコーで何がわかるか?】
今当院で、頸部エコーのキャンペーンを実施しているので、頸部エコーについて、詳しくお話しさせていただきます。
頸部エコー検査は、首の頸動脈の状態を調べるための超音波検査です。
この検査では、動脈硬化の程度、プラークの有無や血管の狭窄などを評価することができ、脳梗塞や心血管疾患のリスク評価に役立ちます。
◆検査方法◆
1. 準備
• 服装: 首元を締め付けない、ゆったりとした服装が望ましいです。タートルネックなどは避けた方が良いでしょう。
• 装飾品: ネックレスなどの首元の装飾品は外すように指示されます。
• 検査前の注意点: 特に食事制限などはありませんが、リラックスして検査を受けられるようにしましょう。
2. 検査の体位
• 多くの場合、検査台に仰向けに寝ていただきます。
• 首を少し反らせるために、首の下にタオルや枕を置いて、首が伸びた状態になるように調整されます。これにより、検査対象となる部位が露出されやすくなります。
3. 検査の実施
• ゼリーの塗布: 検査を行う首の皮膚に、超音波を伝えやすくするための透明なゼリーが塗られます。このゼリーは冷たく感じるかもしれませんが、人体に無害なものです。
• プローブの操作: 検査技師が、超音波を発信する「プローブ」(探触子)と呼ばれる機器を首の表面に当て、様々な方向から滑らせるように動かします。
『甲状腺の観察』: 甲状腺の大きさ、形、内部の状態(しこりや嚢胞の有無など)を詳しく観察します。
『頸部リンパ節の観察』: 首にあるリンパ節の腫れの有無や形、内部構造などを確認します。
『頸動脈の観察』: 頸動脈(脳に血液を送る重要な血管)の壁の状態(プラークの有無や厚さ)、血流の状態などを評価します。必要に応じて、ドップラーモードを用いて血流速度や方向も測定します。
• 呼吸の指示: 必要に応じて、呼吸の指示(「息を吸って止めてください」「楽にしてください」など)が出されることがあります。これは、対象となる臓器の位置を安定させたり、観察しやすくしたりするためです。
• 画面の確認: 検査技師や医師は、リアルタイムで表示されるモニター画面を見ながら、異常がないか、病変がないかを確認します。必要に応じて、画像を記録したり、計測を行ったりします。
4. 検査後の処置
• 検査が終了したら、首に塗られたゼリーをティッシュなどで拭き取ります。ゼリーは水溶性なので、服についても簡単に洗い流せます。
• 着替えを行い、検査は終了です。
5. 結果の説明
• 検査結果は、通常、後日医師から説明があります。緊急性がある場合や、その場で判断できる内容であれば、検査直後に簡単な説明があることもあります。
◆頸部エコーでわかること◆
1.動脈硬化の程度
頸動脈の壁の厚さ(IMT:内膜中膜複合体厚)を測定することで、動脈硬化の程度を評価します。IMTが厚いほど、動脈硬化が進行していると考えられます。
動脈硬化は、血管の内壁にコレステロールやカルシウムなどが蓄積し、血管壁が厚く硬くなる状態です。動脈硬化が進行すると、血管が狭くなり、血流が悪化し、脳梗塞や心筋梗塞などのリスクが高まります。
2.プラークの有無と性状
プラークとは、コレステロールやカルシウムなどが血管壁に付着してできた隆起のことです。プラークの大きさ、数、性状(硬いか柔らかいかなど)を調べます。
柔らかいプラーク(不安定プラーク)は、破裂しやすく、血栓(血のかたまり)を作り、脳梗塞の原因となることがあります。
プラークの性状を評価することで、脳梗塞のリスクをより詳細に評価できます。
3.血管の狭窄の程度
プラークなどによって血管が狭くなっている程度を測定します。狭窄が高度な場合は、脳梗塞のリスクが高まります。
血流速度を測定することで、狭窄の程度を客観的に評価できます。
4.血管のつまり具合
血管がプラークや血栓によって詰まっている状態を観察できます。
血管が完全に詰まってしまうと、その先の脳組織に血液が供給されなくなり、脳梗塞を引き起こします。
◆どんなときにこの検査をするの?◆
通常、健診などの採血で高コレステロール血症や高脂血症があった場合に、「現在の動脈硬化の程度を測定する」ために行われます。「首の動脈」を精査することで、「全身の血管の詰まり具合・狭窄の具合を推測する」ことを目的に行います。
現時点での血管の状態を知ることができます。
• 将来、「脳梗塞」や「心筋梗塞」になる可能性が高いのか、低いのか
• 可能性が高いのであれば、治療はどうするのか
• 治療を開始するタイミングは?
などの有力な判断材料の一つとなります。最適な医療介入のタイミングやその強度を推測するのに役立ちます。
◆まとめ◆
超音波検査は気軽に受けることができ、当院でも検査が可能です。費用の点でも比較的安価です。情報量が多く、おすすめの検査です。
「高コレステロール血症」「高LDL血症」や「高脂血症」と診断されたら、この検査を受けて、現時点での自分の血管の状態を知っておきましょう。
~ 医療法人社団 俊爽会 理事長 小林俊一監修 ~
健康や病気について学べるクリニック
総武線平井駅北口から徒歩4分 仁愛堂クリニック