【お腹が張って苦しい・・・】
お腹の張りは、医学的には「腹部膨満感(ふくぶぼうまんかん)」と呼ばれ、さまざまな原因によって引き起こされます。主な病態としては、消化管にガスが過剰に溜まることや、胃腸の動きが悪くなることが挙げられます。
◆病態
1. ガスによるもの
最も多い原因の一つで、消化管内で発生したガスがうまく排出されずに溜まってしまう状態です。これは「鼓腸(こちょう)」とも呼ばれます。
● ガス産生の過剰:
*呑気症(どんきしょう):食事の際に空気を大量に飲み込んでしまうことで、胃や腸に空気が溜まります。ストレスや早食いが原因となることが多いです。
*腸内細菌叢の変化:悪玉菌が増えることで異常発酵が起こり、腐敗ガスが過剰に発生することがあります。
*食事内容:食物繊維や糖質を多く含む食品、乳製品(乳糖不耐症の場合)などがガスを増やしやすい傾向があります。
●ガス排泄量の低下:
*消化管運動機能の低下:ストレスや不規則な生活、運動不足などにより、腸のぜん動運動が低下し、ガスが排出されにくくなります。
* 便秘:便が腸に溜まることで、ガスの通り道が妨げられます。
* 過敏性腸症候群(IBS):精神的ストレスなどが原因で、腸の機能異常が起こり、便秘や下痢とともにガスの貯留が生じやすくなります。
* 腸閉塞(イレウス):何らかの原因で腸の内容物が通過できなくなる状態です。重度の腹痛や嘔吐を伴い、緊急性が高い病態です。
2. 液体貯留によるもの
腹腔内に水が溜まる「腹水」も、お腹の張りの原因となります。これは、肝硬変や心不全、がんなどが原因で起こることがあります。
3. 臓器の腫大・腫瘍などによるもの
胃や腸、子宮、卵巣などの臓器が炎症を起こしたり、腫瘍ができることで膨らみ、お腹の張りを感じることがあります。妊娠もこれに該当します。
4. 消化機能の低下によるもの
暴飲暴食、不規則な食生活、ストレスなどにより胃腸の働きが低下し、消化不良が起こることでお腹の張りが生じることがあります。
◆症状
• お腹が張って苦しい、重い感じ: 最も典型的な症状です。お腹全体がパンパンに張っているように感じたり、胃や腸にものが詰まっているような重苦しさを感じたりします。
• お腹がゴロゴロ鳴る: 腸内でガスや消化物が移動する際に音が鳴ることがあります。
• おなら(ガス)が出やすい、または出にくい: ガスが溜まっている場合はおならが出やすくなることがありますが、腸の動きが悪いとガスが排出されにくくなり、さらに張りが増すことがあります。
• げっぷが多い: 呑気症などで空気を多く飲み込んでいる場合、げっぷとして排出されることがあります。
• お腹が実際に膨れる: 見た目にもお腹が膨らんでいることがわかります。特に食後や夕方になると顕著になることがあります。
• 胃が重苦しい、不快感がある: 胃の運動機能が低下している場合に見られる症状です。
• 残便感: 便秘を伴う場合、排便後もすっきりせず、便が残っているように感じることがあります。
• お腹の違和感、不快感: 特定の痛みではないものの、何となくお腹に違和感がある状態です。
• 便秘や下痢を伴う: 腸の機能異常や疾患が原因の場合、便通異常と同時に張りが現れることがあります。
[注意が必要な症状(医療機関受診の目安)]
お腹の張りが単なる食べ過ぎや一時的なものではなく、以下のような症状を伴う場合は、できるだけ早めに当院を受診して下さい。
• 激しい腹痛や持続する腹痛: 特に痛みが強くなったり、悪化したりする場合。
• 吐き気や嘔吐: 特に便やガスが全く出ない状態で吐き気や嘔吐がある場合は、腸閉塞の可能性があり緊急性が高いです。
• 発熱: 感染症や炎症を起こしている可能性があります。
• 体重減少: 特に意図しない体重減少は、重大な病気のサインであることがあります。
• 血便や黒いタール便: 消化管からの出血が疑われます。
• 便やガスが全く出ない: 腸閉塞の可能性があります。
• お腹が硬い、カチカチに張っている: 腹膜炎など、緊急性の高い状態が考えられます。
• 張りが何週間も続く、慢性化している: 生活習慣の改善だけでは治らない場合や、疾患が隠れている可能性があります。
• 食欲不振: 食欲が著しく落ちている場合。
• むくみ、息苦しさ: 腹水や他の臓器の病気が関連している可能性があります。
これらの症状が見られる場合は、自己判断せずに速やかに当院を受診し、適切な検査と診断を受けるようにしてください。
◆検査
お腹の張りで当院を受診した場合、医師はまず症状や既往歴、生活習慣などを詳しく聞き取る問診を行い、その上でお腹を触診して張りの状態や圧痛の有無を確認します。これらの情報から、どのような検査が必要か判断されます。考えられる原因によって、以下のような検査が検討されます。
1. 一般的な検査
• 血液検査:
*炎症の有無(CRPなど)
* 貧血の有無
* 肝機能、腎機能、膵臓の機能異常
*電解質バランス
*必要に応じて、腫瘍マーカーやピロリ菌抗体などを調べることもあります。
• 尿検査: 尿路系の異常がないかを確認します。
2. 画像検査
• 腹部レントゲン検査:
*お腹にどれくらいガスが溜まっているか、便が停滞しているかを確認するのに非常に有効です。
*腸閉塞の有無を判断する際にも重要です。
• 腹部超音波(エコー)検査:
*肝臓、胆嚢、膵臓、腎臓などの臓器の状態をリアルタイムで観察できます。
* 腹水の有無や、各臓器の腫れ、腫瘍、結石などを確認できます。
*腸閉塞の顕著な所見や、便秘の程度も確認できることがあります。
• 腹部CT検査:
* お腹全体を網羅的に確認できる検査で、より詳細な情報が得られます。
*各臓器の異常、腫瘍の有無、腹水、腸閉塞の部位や原因などを確認するのに役立ちます。緊急性が高い場合や、より詳しく調べる必要がある場合に検討されます。
★CT検査が必要の場合は、近隣の検査センターを紹介させていただきます。
3. 内視鏡検査
消化管そのものの異常を直接確認するために行われます。
• 胃内視鏡検査(胃カメラ):
* 食道、胃、十二指腸の粘膜を直接観察します。
*胃炎、胃潰瘍、逆流性食道炎、機能性ディスペプシア、胃がんなどの有無を確認できます。
*必要に応じて組織を採取(生検)し、病理検査を行うことで確定診断に繋がります。
• 大腸内視鏡検査(大腸カメラ):
*大腸全体の粘膜を直接観察します。
*便秘やガス貯留の原因となる腸の機能異常、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病など)、ポリープ、大腸がんなどを確認できます。
* こちらも必要に応じて生検を行います。
4. その他の検査
• 便検査: 潜血の有無や、便の性状を確認します。
「検査の選択」
どの検査を行うかは、問診や診察で得られた情報(症状の持続期間、痛み、体重減少、便通異常の有無など)と、医師の判断に基づいて決められます。例えば、ガス貯留や便秘が疑われる場合はまずレントゲン検査や超音波検査を行うことが多く、より詳細な原因や重篤な疾患が疑われる場合は内視鏡検査やCT検査が検討されます。
お腹の張りが続く、他の症状を伴うなど気になる場合は、早めに当院を受診して相談しましょう。
★当院では、最新内視鏡を導入しスコープが細く、柔らかく痛みが少なく、胃・大腸カメラが同時に検査できます。
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◆治療
お腹の張りの治療は、その原因によって大きく異なります。まず、医療機関で正確な診断を受けることが重要です。原因が特定できれば、それに合わせた治療が行われます。
• 便秘:
*生活習慣の改善: 食物繊維や水分を十分に摂る、適度な運動をする、規則正しい排便習慣をつける。
* 薬物療法: 便を柔らかくする薬(酸化マグネシウムなど)、腸のぜん動運動を促す薬、便秘薬などが処方されます。
• 過敏性腸症候群(IBS):
*薬物療法: 腸の動きを調整する薬、下痢や便秘を改善する薬、ガスを抑える薬、精神的なストレスが原因の場合は抗うつ薬などが用いられることもあります。
• 腸閉塞(イレウス): → 近隣の病院を紹介致します。
* 緊急処置: 鼻から胃までチューブを挿入して腸内容物を排出する、点滴による水分・栄養補給が行われます。
* 手術: 癒着によるものや腫瘍が原因の場合は、手術が必要になることがあります。
• 胃炎・機能性ディスペプシア・逆流性食道炎:
*胃酸分泌抑制薬: 胃酸の分泌を抑える薬(PPI、H2ブロッカーなど)が用いられます。
* 消化管運動改善薬: 胃や腸の動きを活発にする薬(モサプリド、アコチアミドなど)が用いられます。
• 肝硬変による腹水:
* 利尿剤: 体内の水分を排出する薬が用いられます。
*食事療法: 塩分制限などを行います。
* 原因疾患の治療。
• 腫瘍: → 近隣の病院を紹介致します。
*悪性の腫瘍の場合は、手術、化学療法、放射線療法などが検討されます。
[対症療法(症状を和らげる治療)]
原因が特定できない場合や、根本治療と並行して張りの症状を和らげるために、以下のような治療が行われます。
1.薬物療法
• 整腸剤: 乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌を補給し、腸内環境を整えることで、ガスの発生を抑えたり、腸の動きを良くしたりします。
• 消泡剤: ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)など、消化管内のガスの泡を潰して排出を促す薬です。即効性があります。
• 消化酵素薬: 消化不良が原因の場合に、消化を助ける酵素を補給する薬です。
• 漢方薬: 体質や症状に合わせて、大建中湯(お腹が冷えて張る場合など)、桂枝加芍薬湯などが用いられることがあります。
• 便秘薬: 便秘が原因の場合は、便を柔らかくしたり、腸の動きを促したりする便秘薬が処方されます。
• 胃腸の働きを整える薬: 胃や腸のぜん動運動を調整する薬が用いられることがあります。
2.生活習慣の改善
薬物療法だけでなく、日常生活の見直しも非常に重要です。
• 食事の工夫:
*ゆっくりよく噛んで食べる: 空気を飲み込む量を減らします。
*ガスを発生させやすい食品を控える: 豆類、イモ類、乳製品(乳糖不耐症の場合)、炭酸飲料、一部の野菜(キャベツ、玉ねぎなど)などはガスを増やしやすい傾向があります。
*食物繊維の摂り方: 便秘解消には重要ですが、摂りすぎるとガスが増えることもあるため、バランスが大切です。水溶性食物繊維(海藻、果物など)は便を柔らかくしやすく、不溶性食物繊維(穀物、根菜など)は便の量を増やす傾向があります。
*発酵食品を摂る: ヨーグルト、納豆、漬物など、腸内環境を整える食品を積極的に摂ります。
• 適度な運動: ウォーキングやストレッチ、ヨガなど、軽い運動は腸のぜん動運動を活発にし、ガスの排出を促します。
• ストレス管理: ストレスは自律神経を乱し、胃腸の働きに影響を与えるため、趣味やリラックスできる時間を持つことが大切です。
• 体を冷やさない: 腹巻を使用するなど、お腹を温めることも効果的です。
• 姿勢の改善: 猫背など前かがみの姿勢は、お腹を圧迫して張りを悪化させることがあります。
• 入浴: シャワーだけでなく、湯船に浸かって体を温めることで、リラックス効果と腸の動きの改善が期待できます。
• 腹部マッサージ: おへそを中心に「の」の字を描くように優しくマッサージすると、ガスの排出を助けることがあります。
◆その他
お腹の張りは日常的によくある症状ですが、症状が改善しない場合や、強い痛み、発熱、体重減少などの異常な症状を伴う場合は、放置せずに早めに当院を受診してください。適切な診断と治療を受けることで、症状の改善と安心して日常生活を送ることができます。
【当院では内視鏡検査をするにあたって、様々な取り組みを行っております】
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~ 医療法人社団 俊爽会 理事長 小林俊一 監修 ~
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