内科疾患のお話し(クローン病について)
2023.04.30更新
クローン病について
【 クローン病とは 】
大腸および小腸の粘膜に慢性の炎症、または潰瘍を引き起こす原因不明の疾患の総称を炎症性腸疾患といいます。狭義にはクローン病と潰瘍性大腸炎に分類されます。
クローン病は主に若年者にみられ、発症年齢は男性は20~24歳、女性は15歳~19歳が最も多く見られます。口腔から肛門に至るまでの消化管のどの部分にも炎症や潰瘍が起こりえます。小腸と大腸を中心として特に小腸末端部が好発部位であり、病変と病変の間に正常な部分が存在することを特徴とします。
【 原因 】
原因ははっきりしておらず、国の難病特定疾患になります。遺伝的な要因が関与するという説、結核菌類似の細菌や麻疹ウイルスによる感染説、食事の中の何らかの成分が腸管粘膜に異常な反応を引き起こしているという説、腸管の微小な血管の血流障害説などがありますがいずれもはっきりと証明されたものはありません。
衛生環境や食生活が大きく影響しており、腸内細菌の善玉菌の減少に加えて動物性脂肪(肉類、ラード、牛乳や乳製品など)を多く含むジャンクフードやタンパク質を多く摂取し、生活水準が高いほどかかりやすいと考えられています。また、喫煙をする人は喫煙をしない人より発病しやすいと言われています。
【 症状 】
主な症状は下記の通りです。
① 腹痛
初期症状では下痢と腹痛が最も多く、半数以上の患者さんにみられます。腸に炎症が起こり、潰瘍ができるため腹部全体が痛みます。また、腸の狭窄があると、内容物が通るときに激しい痛みが起こります。
② 下痢・血便
小腸、大腸にも潰瘍ができるため、消化・吸収が悪くなり下痢を起こします。ときには粘血便も見られます。夜間にも下痢を起こす場合は悪化している可能性があるので注意が必要になります。
③ 発熱
炎症が起こっているので悪化に伴い発熱します。
④ 体重減少
消化・吸収が悪くなっているため栄養障害が起こり、体重が減少します。栄養障害は栄養素の消化・吸収率の低下や下痢、出血、タンパク漏出などによって栄養素が失われること、発熱、代謝亢進、潰瘍などの組織修復に消費されること、食事をしないことによって引き起こされます。
【 検査 】
① 血液検査
寛解状態の確認や、再燃・合併症を早期に把握するために行われます。炎症の有無や程度はCRP、白血球数、血小板数、血沈などで確認されます。基準範囲の値を超えている場合は体のどこかに炎症が生じている可能性が高いです。
② 便検査
小腸・大腸の出血を検査します。目に見えない程度の微小な出血も調べることができます。食べ物などの影響はなく、細菌培養検査により細菌性大腸炎ではないことを確認します。
③ 内視鏡検査
症状や血液検査によって経過を見ていきますが、適切な治療内容を決定するためには内視鏡検査で病変の状態を的確に把握することが必要となります。小腸や大腸の病変を観察とともに生検を行ったりします。
【 治療 】
現在、クローン病を根本から治療する方法は見つかっていないため下記の方法を組み合わせて症状の抑制・改善をしていきます。
① 栄養療法
炎症が落ち着いている場合は通常の食事も可能ですが、炎症がある場合は食事からの刺激を避けるため、吸収されやすい栄養剤を摂取したりする経腸栄養療法が行われます。経腸、腸閉塞などの合併症がある場合は静脈から必要な栄養素を投与します。
② 薬物療法
5-ASA製剤、副腎皮質ステロイド、免疫調整薬などの内服薬が用いられます。症状が改善された場合も、再発を予防するために内服は継続して投与します。
③ 外科治療
瘻孔、腸閉塞、膿瘍などの合併症がある場合は外科治療を検討する必要があります。
【 日常生活における注意点 】
過労やストレスなどによりクローン病が増悪する可能性があるため、十分な睡眠をとり、趣味を楽しんだりして疲れやストレスをためないようにしましょう。
また、食生活の見直し・改善も大切で、一般的に脂肪分や繊維分の少ない食事が推奨されています。
・比較的安全とされる食品
米、もち、うどん、α-リノレン酸系の油(えごま油、しそ油)、リンゴ、モモ、バナナなど
・避けたほうがいいとされる食品
牛、豚、バター、ラード、きのこ、ごぼう、もやし、ごま、ピーナツなど
【 最後に 】
内視鏡検査は当クリニックで受けていただくことができます。気になる症状があった際にはご相談下さい。
★内科専門医による総合医療、全人的医療を提供している仁愛堂クリニックです。総武線平井駅から徒歩4分と近いので、是非ご来院下さい。