★脂質異常症(高脂血症)★
Q脂質異常症とは何ですか?
A脂質異常症は血液中の中性脂肪(トリグリセライド)や、LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)が基準より高い、またはHDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)が基準より低い状態のことをいいます。以前は高脂血症と呼ばれていました。
Qどのような症状がありますか?
A脂質異常症から起こる自覚症状はほぼ皆無で、ほとんどの場合は定期検診などで数値の異常を指摘されて初めて判明します。脂質異常症からの動脈硬化が「沈黙の病気」といわれるのはそのためです。脂質異常症には他の病気に付随して発症する続発性のものがあり、例えば
・甲状腺機能低下症
・副腎皮質ホルモンの分泌異常
・糖尿病
・腎臓病
・肝臓病
などが挙げられます。このような病気に伴って発症する場合には、各病気の症状がきっかけとなって判明するケースもあります。
Q原因は何ですか?
A脂質異常の状態になる原因としては、遺伝的な要素、過食、脂肪の多い食生活、運動不足、ストレスなどが関係しています。特に近年、国内で脂質異常症の患者が増えた背景には、食の欧米化が進んで動物性脂肪の多い食事が増えたこと、車の普及などによって慢性的な運動不足の状態にあることなどが関わっているといわれています。コレステロール値が高くなる原因としては脂肪の多い肉や卵、乳脂肪分の多いバター、チーズ、即席麺などの食べ過ぎが挙げられます。中性脂肪値が上がる原因となるのは、果物や甘いお菓子の食べ過ぎ、お酒の飲み過ぎなどです。またタバコを吸うと善玉コレステロール値が低くなり、脂質異常の状態になりやすいことも判明しています。さらに運動を怠ると体内で消費されるエネルギーが減り、ますます脂質の代謝が悪化してしまいます。大半の脂質異常症は成人以降の食生活、運動不足、体重増加などが原因となって起こるといわれています。
Q放っておくとどうなりますか?
Aコレステロール値に異常がある(特にLDLコレステロール値が高い)と、動脈硬化が進み、脳梗塞、心筋梗塞など血管系の病気が起きやすくなります。中性脂肪値が高いと急性膵炎を起こすこともあります。家族性高コレステロール血症では皮膚やアキレス腱等に黄色腫が発見することもあります。
・脳梗塞、脳出血
・心筋梗塞、狭心症
・大動脈瘤、大動脈解離
・閉塞性動脈硬化症
・腎臓障害
Q検査はどのように行いますか?
A脂質異常症の診断は血液検査で行います。脂質異常症の程度が強い場合には、それが分かった段階で心臓の異常がないか、動脈硬化が進んでいないかなどを、心電図や心臓超音波(エコー)検査、頚動脈超音波(エコー)検査などで確認します。
当院では予約にて超音波(エコー)検査を行っております。
また高脂血症がある方は、高血圧や糖尿病、高尿酸血症を合併しやすいので、こちらの精査も行います。
Qどのような予防法がありますか?
Aまずは食事や運動を含んだライフスタイルの改善を行いましょう。
・禁煙する
・食生活を見直す
・運動量を見直す
・適正体重に近づけると同時に内臓脂肪を減らす
2020年厚生労働省より、脂質異常症がある場合には重症化を防ぐためにコレステロール摂取量を1日200mg未満に抑えることが望ましいと発表されました。動物性脂肪の代わりに魚や植物性の油を多く摂ること、コレステロールの吸収を抑える食物繊維を多く摂ること、マーガリンなどに含まれるトランス脂肪酸の過剰摂取を避けること、アルコールを控えめにすることなどです。また1日30分以上の有酸素運動を取り入れることも推奨されます。ウォーキング、水泳、サイクリングなどです。
有酸素運動は15分以上続けると効率よく脂肪が燃えだすため、1回15分以上行うのが望ましいです。
日常生活で運動をする時間をつくるのが難しい場合は、現在の生活パターンを変えずにできる運動が一番現実的です。
たとえば、通勤時に「バス停一つ分歩く」「自転車で行くのを徒歩にする」「エレベーターやエスカレーターを使わず、階段を使ってみる」などです。雨の日は無理をせず、最低週3回以上を目標にするのが続けやすいポイントかもしれません。
おわりに
増え続ける脂質異常症はやっかいな病気です。最初は数値の異常でしかないのですが、症状のないうちに全身の動脈がむしばまれ、動脈硬化が進むからです。
その動脈硬化の進行具合は体質や日々の生活習慣が関係し、人によってさまざまです。症状がないから大丈夫ではないのです。
遺伝を含めた自分の体質や、生活習慣、現在治療中の病気などをひっくるめて、動脈硬化を起こさずに若い血管のままで元気に生活するにはどうしたらいいのか、じっくり自分に向き合って考えてみてください。
自分に合った予防法が、少し見えてくるのではないのでしょうか。
脂質異常症は、動脈硬化を起こす一番大きな原因ですが、一人ひとりが、自分にとって必要な予防法を実践すれば防げるものです。症状がないうちから始め、生 涯続けられるよう、まずは生活習慣の工夫から始めてみてください。
当院で受診、治療が可能です。
管理栄養師による指導も実施してすのでお気軽にお問合せ下さいませ。