内科疾患のお話し(アニサキス症について)
2022.05.31更新
アニサキス症について
【 アニサキスとは 】
アニサキスは寄生虫の一種です。約20~35mmの白い糸状の体を持ち、オキアミというプランクトンの一種を食した魚介類を介してヒトに感染します。軽い腹痛を伴うケースから、激痛、腸重積、腸閉塞に至るケースなど様々です。アニサキスはヒトの体内に入ると約1週間程度で死んでしまうため、全くの無症状で済むこともあります。
【 症状 】
・胃アニサキス症
食後、数時間~10数時間後に上腹部痛、吐き気や嘔吐などの症状が現れますが、食中毒と違い下痢がないのが特徴です。これらの症状は胃の壁にアニサキスが突き刺さったことによる直接の痛みではなく、胃に食いついたアニサキスに対するアレルギー反応で生じていると言われています。1回目にアニサキスを摂取したときには症状はなく、2回目以降の摂取で症状が出ると言われています。
よって治療はアニサキスの除去が有効であるため、アニサキス虫体を内視鏡的に除去することで症状が消失します。
・腸アニサキス症
アニサキスが口から体内に入り、腸に食いつくことで発症します。食後、十数時間~数日後に強い下腹部痛・吐き気・嘔吐・発熱などの症状が現れます。稀ではありますが、腸閉塞や腸穿孔に至る場合があります。
・消化器外アニサキス症
胃アニサキス症や腸アニサキス症と比べると、比較的にまれな症状です。
経口感染したアニサキスが消化管を突き破り、腹腔へと飛び出て寄生します。虫体寄生部位に応じた症状が現れます。
・アニサキスアレルギー
アニサキスに対するアレルギーです。経口感染後に蕁麻疹、血圧の降下、呼吸不全、意識消失などの症状がでます。アレルギーの中でも最も重症なものが、アナフィラキシーショックです。国内のアナフィラキシーショックの原因を見ると、アニサキスは、食物、薬物に次いでの第3位になっています。
【 検査・治療 】
・検査
問診の上、アニサキスが胃にいると疑われる場合には、胃カメラ検査を行います。同時に除去する治療も行うことが出来ます。
胃のさらに奥、小腸にいる場合には、エコーやレントゲン検査、血液検査などを行いますが、胃よりも奥にアニサキスが存在することを証明するのは困難です。
・治療
胃カメラ検査でアニサキスを発見した場合には、その場で摘出することができます。摘出後症状は治まります。
内視鏡での摘出が難しい場合には、対症療法として鎮痛剤や点滴で補液をして症状を抑えながら、死滅するのを待ちます。
【 アニサキスの予防 】
・アニサキスが発見されやすい魚
アニサキスは、下記の魚から発見されることが多いです。白身魚では頻度が少ないですが、アニサキスが寄生している可能性はゼロではないので注意が必要です。
・サバ
・ホタルイカ
・イカ
・サンマ
・サケ
・イワシ
・タラ
・ホッケ
・予防策
魚介類を加熱・冷凍処理せずに刺身等、生で食べることでアニサキス症のリスクが高くなります。酢やワサビなどでは死滅しないです。アニサキスは、60℃以上での1分以上の加熱・マイナス20℃以下での24時間以上の冷凍によって死滅します。そのため、そういった処理を行うことでアニサキス症を予防することができます。
また、アニサキスは目に見える大きさ(約20~35mm)であるため、調理するときや食べるときには注意をすることが大切となります。
魚の内臓に寄生していたアニサキスは、魚が捕獲された直後に筋肉へと移動する習性があります。そのため、刺身用に調理する場合には、魚が新鮮なうちに内臓を取り出しておくことで、アニサキスを一緒に排除できる可能性が高まります。特にシメサバによるアニサキス症が多いため、シメサバを作る際はできるだけ早く内蔵や内蔵周りの筋肉を除去し、冷凍することで感染するリスクを下げることができます。
★夏はとくにアニサキスだけではなく、食中毒が多発しやすい時期です。
魚介類を食べたあとに上腹部痛・下腹部痛・吐き気・嘔吐・発熱などの症状が現れたときには、できるだけ早めに当院にご相談ください。