疾患のお話し「痛風について」
2025.05.27更新
【痛風について】
◎痛風とは?
痛風は、体の中に尿酸という物質がたまりすぎて、それが結晶になって関節などに炎症を起こす病気です。風が吹いただけでも痛むほど激しい痛みを伴うことから、この名前がつきました。
◆症状
痛風の最も特徴的な症状は、足の親指の付け根に突然起こる、激しい痛みです。この痛みは、まるで何かで殴られたような、あるいは焼けるような、刺すような痛みと表現されることがあります。
痛みが起こる場所は、足の親指の付け根が多いですが、足の甲、かかと、くるぶし、膝、手首、肘など、他の関節にも起こることがあります。
痛みのピークは通常、発作が始まってから半日~1日程度で、その後徐々に和らいでいきます。しかし、完全に痛みが引くまでには数日から2週間程度かかることもあります。
痛風発作は、夜間や明け方に起こりやすい傾向があります。また、発作が起こる前には、関節に違和感やかゆみを感じることがあります。
◆原因
痛風の主な原因は、血液中の尿酸値が高い状態(高尿酸血症)が続くことです。尿酸は、体内で作られるプリン体という物質が分解される際にできる老廃物です。通常、尿酸は腎臓から尿として排泄されますが、以下のような場合に血液中の尿酸値が高くなります。
●「プリン体の過剰な摂取」 : レバー、魚卵、干物、ビールなどに多く含まれるプリン体を摂りすぎると、体内で作られる尿酸の量が増えます。
●「尿酸の産生過剰」 : 体質的に尿酸を多く作りやすい方もいます。
●「尿酸の排泄低下」 : 腎臓の機能が低下したり、特定の薬を服用したりすることで、尿酸の排泄がうまくいかなくなることがあります。
●「水分不足」 : 水分摂取量が少ないと、尿酸が濃縮されやすくなります。
●「肥満」 : 肥満も高尿酸血症のリスクを高めます。
●「ストレスや激しい運動」 : これらも一時的に尿酸値を上げることがあります。
高尿酸血症の状態が長く続くと、血液中の尿酸が結晶となって関節やその周りの組織に沈着し、炎症を引き起こして痛風発作が起こります。
◆検査
① 診察(問診・視診・触診)
●症状の現れ方、痛みの部位、程度、過去の病歴、服用中の薬、生活習慣などを詳しく聞きます。
●関節の腫れや赤みなど、見た目の状態や触診で確認します。
② 血液検査
● 血清尿酸値の測定 : 痛風の診断に最も重要な検査です。血液中の尿酸値が7.0mg/dlを超えると「高尿酸血症」と診断されます。ただし、痛風発作中でも尿酸値が高くない場合もあるため、数値だけで判断せず、総合的に診断されます。
●炎症反応の確認 : 痛風発作時には炎症が起きているため、血液検査で炎症の有無を確認します。
●その他の合併症の確認 : 痛風の患者さんには、高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病や、肥満、脂肪肝などの合併症が見られることが多いので、これらの検査も同時に行われることがあります。
●腎機能の確認 : 高尿酸血症は腎機能の低下や腎不全を引き起こす可能性があるため、腎機能(クレアチニンなど)も確認します。
③尿検査
●尿酸の排出量 : 尿酸の排出量を確認し、高尿酸血症が尿酸の排泄低下によるものか、産生過剰によるものかを判断します。
● 尿pH : 尿が酸性に傾くと尿酸が溶けにくくなるため、尿のpHをチェックします。
●腎機能の確認 : 尿中のタンパクや潜血なども確認し、腎機能の状態を把握します。
④ 画像検査
● 超音波(エコー)検査 : 関節内の炎症の程度や尿酸の濃度を推定したり、尿路結石などの合併症を確認したりできます。偽痛風(ピロリン酸カルシウム結晶による関節炎)との鑑別にも有効です。
● X線(レントゲン)検査 : 患部の関節と正常な関節を比較し、腫れ具合などを確認します。痛風の初期では異常が見られないこともありますが、他の病気との鑑別にも役立ちます。
◆治療法
痛風の治療は、発作時の治療と発作予防のための治療の2つに大きく分けられます。
➀発作時の治療
●安静 : 痛む関節をできるだけ動かさずに安静に保ちます。
●冷却 : 炎症を抑えるために、患部を冷やします。
●薬物療法 : 痛みを抑えるための鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症薬など)や、炎症を鎮めるための薬(コルヒチンなど)を使用します。自己判断で市販薬を使用せず、必ず医師の指示に従ってください。
②発作予防のための治療
発作が頻繁に起こる方や、高尿酸血症が続く方には、尿酸値を下げるための薬物療法を行います。
●尿酸排泄促進薬 : 腎臓からの尿酸の排泄を促す薬です。
●尿酸産生抑制薬 : 体内での尿酸の産生を抑える薬です。
これらの薬は、医師の指示に従って定期的に服用することが大切です。また、薬物療法だけでなく、生活習慣の改善も非常に重要になります。
◆予防法
痛風の発作を予防し、健康な生活を送るためには、以下の点に注意しましょう。
●プリン体を多く含む食品を控える : レバー、魚卵、干物、エビやカニなどの甲殻類、ビールなどのアルコール飲料は、適量を守るようにしましょう。
●バランスの取れた食事を心がける : 肉類や揚げ物などの脂質の多い食事は控えめにし、野菜や果物、海藻類などを積極的に摂りましょう。
●十分な水分を摂取する : 1日に1.5~2リットルを目安に、水やお茶で水分をしっかり摂りましょう。これにより、尿酸が尿として排泄されやすくなります。
●適度な運動を続ける : 肥満は高尿酸血症のリスクを高めます。ウォーキングなどの有酸素運動を継続的に行い、適正な体重を維持しましょう。ただし、激しい運動は一時的に尿酸値を上げることがあるため、注意が必要です。
●アルコールを控える : アルコールは尿酸の産生を促し、排泄を妨げる働きがあります。特にビールはプリン体を多く含むため、できるだけ控えましょう。
●ストレスをためない : ストレスも痛風発作の誘因となることがあります。適度な休息や趣味の時間を持つなど、ストレスを解消する方法を見つけましょう。
●定期的な健康診断を受ける : 尿酸値を定期的にチェックし、異常があれば早めに当院を受診し、医師に相談しましょう。
◆まとめ
痛風は、適切な治療と生活習慣の改善によって、発作を予防し、健康な生活を送ることが十分に可能です。もし、関節の痛みや腫れなどの症状があれば、我慢せずに早めに当院を受診してください。一緒に痛風と向き合い、より良い生活を送れるようにサポートさせていただきます。何かご不明な点があれば、いつでも当院にお気軽にご質問ください。
~ 医療法人社団 俊爽会 理事長 小林俊一監修 ~
健康や病気について学べるクリニック
総武線平井駅北口から徒歩4分 仁愛堂クリニック