仁クリブログ

2022.09.16更新

【抗菌から無菌までについて】

昨今のコロナ禍で抗菌・除菌・殺菌というフレーズをよく聞きます。さて、これらの意味は何でしょうか?何となく「菌やウィルスを抑える消毒のレベル」だとわかりますが...。
 今回はこの点について少しお話したいと思います。
 
 前記の「菌やウィルスを抑える消毒のレベル」にはもっと広い段階があります。主に、①抗菌、②除菌、③殺菌、④滅菌、⑤無菌があげられます。後ろになるにつれて消毒効果のレベルが増強します。

①抗菌
単純に、菌の増殖を抑えること。抗菌されていない状態より菌の繁殖がされにくい環境を作ることです。よく「抗菌コート」という言葉で使われますが、相当な数の菌はいるけどそれ以上増えにくくするだけのレベルです。使われるのは、スマートフォンの液晶フィルム、トイレの便座、家具など日ごろ手で触るものです。
経済産業省から言われる抗菌の定義からは残念ながらウィルスはその対象に入ってません。
②除菌
読んで字のごとく「菌を除く」こと。ここから初めて、ウィルスも対象になりますので微生物という言葉も使います。
菌を取り除くといっても完全に菌をどけるのではなく、大部分の微生物を移動させる程度を考えたほうが正しいかもしれません。当然、微生物を死滅させるわけではありません。また、減らす微生物の種類や数は定義されてません。
主に、洗濯洗剤、食器洗剤、ウェットティッシュで使われます。あと電車内の窓開け換気も「空間の除菌」に値するかもしれません。
③殺菌
これも読んで字のごとく「菌を殺す」こと。ここから初めて微生物を物理的・化学的に殺すことになりますが、これも残念ながら微生物の種類や数は定義されてません。用途はおなじみのアルコール消毒や薬用せっけんがあげられます。アルコール消毒は後ほどお話ししたいと思います。
④滅菌
読んで字のごとく単に「菌を滅する」だけではありません。ここから具体的な定義がつけられています。簡単に言うと微生物の数を100万分の1以下に死滅させます。対象となるのは口腔以外で体の中に入れるもの、主に手術器具や注射針等です。殺菌までは家庭でも行うことができますが、滅菌は医療施設の高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)やガス滅菌を用います。もし家庭でできる滅菌といえば煮沸消毒か火炎滅菌くらいかと思います。オートクレーブについても後ほど少しお話ししたいと思います。
⑤無菌
ここまでくると消毒の範疇ではありません。一応定義は、適切な滅菌工程により滅菌された製品中の汚染菌の最大生存確率が10のマイナス6乗であること。10のマイナス6乗とは滅菌の項目で出てきた100万分の1です。ただしここでは微生物の数でなく生存確率です。少し想像つきませんね。無菌を英語では「sterile」と「aseptic」の2つの意味があります。
「sterile」は生存可能な微生物がいない事。私的には微生物が一匹もいない空間はありえないと思いますが。
「aseptic」は汚染物質または微生物が既定の許容限界範囲内に管理されている事。よく大きな病院で無菌室という部屋を見かけます。これは後者の意味で管理されています。

 これまで抗菌から無菌まで簡単にお話ししましたが、日常生活において役立つ知識は殺菌まででしょうか。ここで、殺菌の項目で触れましたアルコール消毒についてお話ししたいと思います。
薬局等で陳列されているアルコール消毒剤は、エタノールが使われているものとイソプロパノールが使われているものがあります。当然用途も異なります。
①エタノール製剤
主に手指消毒です。手指を消毒するので直ぐに乾燥させずなじませるためにジェルが入っていることが多いです。採血や点滴で使う酒精綿ではジェルは入ってません。意外と知られてないのですがアルコール消毒は揮発する時殺菌効果が増します。
②イソプロパノール製剤
一般には手指以外の器具消毒です。エタノール製剤に比べ約2倍の殺菌効果があるといわれてます。手指の消毒にもならないこともないのですが、皮膚の浸食が強く手荒れしやすいです。
またほとんどのウィルスに有効ですがノロウィルスとアデノウィルスに対しては効果が弱いです。
昨今手指消毒用ではないのですがエタノールIPという種類の消毒剤があります。IPとはイソプロパノールの略でエタノール製剤に少量のイソプロパノールが添加されています。ノロウィルス感染の疑われた患者の器具の消毒で役立ちます。

実際の商品には使用用途が詳しく書かれていたり、陳列棚も離れていたり迷うことはないと思いますが知っておくと便利ですね。

最後に、滅菌の項目でふれたオートクレーブについて話します。
当院でもオートクレーブ(高圧蒸気滅菌装置)を用いてます。主に耐熱性内視鏡用器具です。

オートクレーブ(高圧蒸気滅菌装置)
高圧蒸気滅菌とは134℃2気圧10分間の環境下により微生物を死滅させます。前述のように滅菌とうたってるので微生物の数は100万分の1まで減らすことが可能です。

134℃2気圧10分間の環境下により微生物を死滅

しかしなぜ134℃という中途半端な温度なんでしょうか?
世の中で屈指の耐熱性の細菌が存在してます。Bacillus stearothermophilus、バチラス ステアロサーモフィルスといいます。
通常、ほとんど細菌は75℃以上1分間の煮沸、ノロウィルスは85℃以上1分間の煮沸で死滅します。
バチラス属は芽胞という耐熱性の糖で出来た殻を作り100℃くらいでも生存できます。中でも Bacillus stearothermophilusは最も耐熱性に優れオートクレーブの性能評価に使われる細菌です。逆に言うとこのくらいの条件下でないと死滅しません。
因みにこの細菌は非病原性細菌でよかったです。しかし芽胞有する細菌は怖い細菌も多いのも事実です。例えば炭疽菌、ボツリヌス菌、破傷風菌、ガス壊疽菌など要注意です。

 

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