【誤嚥性肺炎について】
1. 誤嚥性肺炎とは?
食べ物や飲み物、唾液などを飲み込むことを嚥下といいます。健康な人であれば、嚥下をすると口から食道を通って胃に入ります。しかし、嚥下機能が低下すると食べ物などが口から気管に入ってしまうことがあります。これが誤嚥です。誤嚥によって細菌やウイルスが肺に入っておこる肺炎が誤嚥性肺炎といいます。
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2.誤嚥性肺炎は高齢者に多い?
高齢になると、以下の理由から誤嚥しやすくなります。
① 食べ物を十分に噛めない、口・舌・のどの筋肉と筋力が落ちている、唾液の出る量が少なくなるため食べ物を飲み込んでものどに残りやすい。
② のどの筋肉と筋力が落ちている、のどの反射が弱くなることで食べ物が誤って気管に入ってもせき込まない。またはせき込みが弱い。
誤嚥性肺炎を発症する方は、85歳を超えると特に多くなる傾向にあることが分かっています。
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3.誤嚥性肺炎の症状は?
発熱の他に、せきが長期的に続くなどの症状が見られますが、高齢者では症状が出にくい場合もあります。
< 一般的な症状 >
・発熱(37.5℃以上)
・せきが7日以上続く。
・粘り気のある痰、黄色や緑の痰がでる
・息苦しい
・動悸がする、いつもより脈が速い
・寒気がする など
< 高齢者では症状が出にくい方もいる >
・熱が出ない、または微熱程度
・せきや痰などの症状があまりみられない
・何となく元気がない
・食欲がない
・ボーッとする など
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4.予防方法は?
⑴ 食事のとき、むせない工夫をする。
< むせやすい食品 >
・水、お茶などさらさらした液体
・味噌汁など、液体と固体が混ざった料理
・イモ類、木綿豆腐、ひじき、かまぼこなどのぱさぱさ・ぼろぼろした食べ物
< 食べ物を工夫する >
① とろみをつける
食べ物を口の中でひとまとめに飲み込めるように、とろみをつけるなどして工夫する。
・あんかけ、卵とじ、市販のとろみ剤をつかう
② 飲み込みやすいかたちにする
口やのどに張り付きやすいものは、飲み込みやすいようにかたちを変えましょう。
・海苔は板海苔ではなく佃煮にする
・薄切りキュウリやレタスなどは、ぺらぺらしたかたちにしない
(千切り、やや厚めに切る、葉物野菜は巻いて食べるなど)
・お餅・団子などは小さくちぎる、とうふ白玉に変える
(白玉粉を木綿豆腐の水分で丸めて白玉にする)
< 食べ方を工夫する >
① 食べる姿勢を整える
誤嚥しにくい姿勢をとり、食べることに集中する
・顎を引く
・椅子には深く腰掛け、かかとをしっかり床につける
② のどの通りをよくする
食事の前に水分を取り、のどの通りをよくする
③ 少しずつ食べる
一口で食べる量を少なくし、ゆっくり食べる
⑵ 飲み込む力をつける
飲み込みの力を維持するため、また、唾液を出しやすくするために口やのどの体操をしましょう。口周りやのどの筋肉・筋力が上がり、口の乾燥を防ぐだけではなくオーラルフレイルの予防にも繫がります。
⑶ 口の中の細菌を減らす
口の中には常に細菌がいますが、口の中を清潔に保つことで細菌の増殖を防ぐことができます。
・起床後すぐに口を漱ぐ
・食後は歯磨きをする(舌ブラシをするとさらに効果的です)
・入れ歯は外して丁寧に洗う
・定期的に歯科医院に行き、口内が清潔か、かみ合わせに問題はないかみてもらう
⑷ 免疫力を高めておく
十分な睡眠をとる、バランスの良い食事をとる、換気をすることで免疫力を高めることができます。免疫力を高め、細菌やウイルスと戦う力を備えておくことも発症予防のために重要となります。
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5.最後に
当院では上部内視鏡(胃カメラ)を行う際に、咽頭麻酔を使用します。麻酔の影響により一時的に嚥下機能が低下するため、検査終了後1時間は飲食を控えていただきます。食事開始前にむせないか確認することで誤嚥性肺炎を防ぐことができるため、特に高齢の方は検査後注意してください。
また、日常生活においては誤嚥しないように工夫しながら、おいしい食事をして毎日を元気に過ごしましょう。