仁クリブログ

2022.11.17更新

当院の発熱外来においての新型コロナウィルスの検査法についてお話ししたいと思います。

殆どの場合、抗原検査やPCR検査(NEAR法含む)を行いますが、患者様の病態や状況によって実際の検査の組み合わせが異なってきます。
 今回はそれぞれの検査法の違いや手技、原理を説明していきたいと思います。新型コロナウィルスの検査法には大きく分けて3つ、①抗原検査、②PCR検査、③NEAR法があります。また、採取法も異なります。

まず
【採取法】
 実際の検体は鼻腔ぬぐい液、鼻腔咽頭ぬぐい液、唾液または咽頭ぬぐい液があります。唾液を除き採取にはスワブという綿棒のようなものを使いますがそれぞれ太さが異なります。
 実際のスワブを並べ、太さがわかるように5円玉を置きました。
スワブ
 左から鼻腔用、中央と右は鼻腔咽頭用です。右の細いスワブはインフルエンザ抗原キット用のスワブです。
 また鼻腔と鼻腔咽頭では採取部位も異なります。
鼻腔鼻腔咽頭
 左が鼻腔、右が鼻腔咽頭です。説明書ではNERA法では両側の鼻腔、抗原検査では片方の鼻腔咽頭とされています。
 NEAR法の鼻腔採取ですが、この太い右のスワブで実際私の鼻腔で試してみました。特に鼻症状もない健常時でしたが、かなり痛かったです。片方の鼻腔で断念しました。5円玉の穴くらいの径でしたから。このスワブを使って両方の鼻腔から採取するのはちょっと現実的でない気がします。このメーカーは、近々鼻腔用から鼻腔咽頭用に変えていくとのです。
 中央のスワブは、抗原検査用のスワブで片方の鼻腔からの採取でよいとされています。この抗原検査キットは市販の抗原検査キットと異なり、医療機関で用いられているもので感度の良い鼻腔咽頭から採取します。市販のものの多くは鼻腔で採取するように説明書では書かれています。というのも、一般の方が鼻腔咽頭までスワブを挿入することは困難ですね。ましてやご自身で採取するのは無理です。
 上記鼻腔や鼻腔咽頭の採取法では小児にとって脅威になると思います。特にNEAR法の鼻腔用スワブは、メーカーは推奨されてもいないですし実際の検出率の統計を取っているわけではないのですが、唾液からの採取や咽頭用スワブとして使っている施設もあるそうです。おそらく小児の場合だと思います。
 最後に、PCR法の唾液採取です。一番簡便で無料のPCRセンターで見かけられます。利点は採取に苦痛を伴わない事、後で述べますが新型コロナウィルスの検査法では現在最も高感度である事、陽性陰性の判定だけでなく陽性だった場合変異株かどうかの後追い検査も可能な事があげられます。欠点としては高齢者や熱発中の患者様の場合そう簡単に唾液は取れません。採取に関しても歯磨きやうがい飲食は検査前1時間は開ける事、喀痰や血液の混入を避ける事があげられます。鼻腔や鼻腔咽頭でもこれらの制限がありますがよりシビアです。もっというと、唾液も刺激性の唾液は好ましくありません。刺激性の唾液とはレモンとか梅干を想像して分泌される唾液ですので、何も考えずに自然と分泌される唾液を採取することになります。

【各検査法の特徴】
 今までは採取に関して説明しましたが、実際何がどう違うのかを説明していきたいと思います。
①抗原検査
抗原(新型コロナウィルス)と抗体反応。難しく言うと金コロイドを用いたイムノクロマト法です。新型コロナウィルスの検査だけでなくインフルエンザ、溶連菌、HCG、便潜血の検出等幅広く応用されています。
抗原検査
 
 わかりやすく、陽性だった場合について説明します。
コロナウィルスを含んだ鼻腔咽頭ぬぐい液は滴下部位にある金の微小な粒(金コロイド)でついた(標識された)抗体と結合します。金は大きな塊だとゴールドですが細かく小さくすると赤く見えます。この抗原抗体複合体(免疫複合体)が流れて、陽性ラインにある別の抗体がついていて(固相化された)ここで免疫複合体が更に結合します。陽性ラインにある抗体は固相化されて金コロイドを含んだ免疫複合体はここでとどまり赤く発色します。
陰性だった場合。滴下部位では抗原反応は行われず金コロイドが標識された抗体が流れていきます。陽性ラインではもともと抗原がないのでそのまま通り過ぎます。コントロールラインでは抗原と結合していた抗体が固相化されていて、ここで流れてきた金コロイド標識抗体と反応し赤く発色します。
 コントロールラインで発色し始めて判定ができます。陽性でも陰性でもコントロールラインでは必ず発色し、もし発色しなければ十分な金コロイド標識抗体が流れていなかったということです。原因は手技的な問題で滴下量が少なかった、あるいは鼻腔咽頭ぬぐい液の粘調性が著しく高くプレート内を十分浸透できなかった事が考えられます。
 判定時間はメーカーにもよりますが10~15分。当院で使用しているキットは10分です。強陽性の場合滴下して約30~40秒で陽性ラインが発色し1分以内でコントロールラインが発色します。これは陽性として判断してよいのですが、判定時間間際になって薄く陽性ラインが発色することがあります。弱陽性でも陽性は陽性です。
 ここで注意するのが判定時間は必ず守って下さい。キットによっては判定時間を大きく過ぎてしまった際まれに陰性でも陽性ラインが薄く発色することがあります。これは陰性です。コントロールラインに固相化された抗体が剥離し陽性ラインまで流れ反応してしまうと考えられています。
 抗原検査は特別な検査機器を必要とせず市販キットも安価で購入できるためご家庭やどこでも検査可能です。しかし感度がやや低いため強く陽性が疑われる場合の証明では有効ですが、ウィルス量が少ない時、特に超急性期や回復期など、陰性に出ることがあります。次に説明しますPCR法の陽性率を100とすれば陽性一致率は76%前後とされています。なので、抗原検査で陰性でもPCR法又はNEAR法で陽性であることが多々あります。
②PCR法
 PCRとはポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction)の略で核酸増幅法です。上記抗原検査はウィルスそのものを捕まえるとしたら、ものすごく乱暴な言い方すると、PCR法はウィルスのDNA鑑定と例えられています。実際にはコロナウィルスはDNAの代わりにRNAを持つウィルスですが。
 原理としては上記抗原検査に比べ至ってシンプルです。ウィルスの持っている遺伝子の一部を人工的に極限まで増幅し検出する方法です。増幅は2の30乗、10の9乗、約10億のコピーを作ります。
 通常PCR法は2本鎖のDNAに対して行うのですが、一度2本鎖をほどいて(変性)、特徴的な塩基配列部分に対しプライマーと呼ばれる短い複製用DNA分子を結合させ(アニーリング)、DNAポリメラーゼと呼ばれる酵素によりプライマーを起点として複製させる(伸展)ことが一般的です。これを加熱と冷却を12時間かけて30回前後繰り返すとターゲットの塩基配列が約10億倍に増幅されます。

PCR
 RNAは1本の長い塩基配列で構成されていますが、同様にポリメラーゼを用いて2本鎖のDNAとして進展させていきます。
 PCR法は前述の通り高感度ですがサイクルを12時間、全ての検査時間含めるともっと時間がかかります。測定する検査機器も非常に大掛かりで大病院、研究施設、大手検査センターで設置されています。当院含め大部分の医療機関は検査センターに委託していると思います。委託し結果を書面として届けるのに早くとも2日ほどかかってしまうのはこのためです。昨今のコロナ禍では検査が間に合わず翌日の結果に間に合わないこともありました。ラボの技師さん、お疲れ様です。
③NERA法
 原理はほとんどPCR法と似ています。核酸増幅法の一種で、PCR法の改良型です。正式名称は等温核酸増幅法(Nicking Enzyme Amplification Reaction)といいます。
 特徴は、PCR法では12時間かけて加熱冷却繰り返していた方法を1回の等温加温で15分程度で判定させる画期的な検査法です。
 実は先月から当院はじめ俊爽会よりこの検査法を導入しました!

院内PCR
Abot社製のID NOWという検査機器です。昨今この検査機器を導入されているクリニック様を多く見かけるようになりました。公費で検査自体は無料(診察、トリアージなどは有料)ですが、自費で20,000~22,000円くらいで行っている施設さんが多いようです。
もし陽性なら5分程度、陰性なら15分程度で判定できます。
肝心の検査精度はPCR法と比べ陽性一致率は約95%(抗原検査では75%)陰性一致率は約97%です。厚生労働省もPCR法同党の承認も得られています。PCR法では発熱外来で来院された場合結果が出るまで自宅待機ということがありましたがそれがなくなります。
 欠点はあります。冒頭述べました、この検査キットの鼻腔用スワブはあの太いスワブです。なので当院では鼻腔咽頭用スワブを使用しています。あとは一回に一つの検体しか検査できません。抗原検査では並列して検査行うことができましたが、複数人分の検査を行う際最後の方は少々お待たせすると思います。
 海外への渡航時の陰性証明は注意が必要です。一応現時点アメリカや韓国では陰性証明はこのNEAR法を承認していますが国としてはPCR法を推奨しているようです。国によっては承認されてない場合もあるので各大使館への確認が必要です。

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仁愛堂クリニック 診療時間 TEL:0120-905-728 お電話でのお問い合わせはこちら 内視鏡検査専用TEL:0120-905-728
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