仁クリブログ

2023.01.28更新

【頸動脈超音波の狭窄率について】

 

 今回は昨年の仁クリブログで掲載しました頸動脈超音波について、もう少し詳しく話していきたいと思います。一部重複する内容もあるかと思います。また、私が日頃検査して考えてることも話していきたいと思います。
 頸動脈超音波を行った際、よく患者様に「これは何の検査?」と聞かれることが多いのです。その時は「簡単に言うと動脈硬化の検査です」と答えます。ちょっとザックリすぎた答えなので、「頸動脈の血管を調べることで体中の血管の状態もおおよそ予測がつくのです。頸動脈の動脈硬化が進んでいるということは体中の血管もそれなりに動脈硬化を起こしていると示唆できますから」と付け加えます。また、何回も頸動脈超音波検査を受けられている患者様には「血管のつまり具合はどうですか?」と聞かれます。ここで私は「うーん、つまる、ね」と心の中で思い、返答に{つまり}ます。(以下の4)
 確かに頸動脈超音波検査は、目的の中で血管のつまり具合を調べる検査とも言われています。「つまる」の意味とは何でしょう?いくつか意味があって
1 隙間もなく入っていっぱいになる。(予定がつまる)
2 途中がふさがって通路・管などが通じなくなる。(鼻がつまる)
3 長さ・幅や間隔が短くなる。(日がつまる)
4 上手い対応がなくて苦しむ。(生活につまる)
5 最後のところまで行きつく。(つまるところ)
6 野球で、バッターがつまったあたりをした・・・。
など
2番が該当する意味ですね。しかし、頸動脈がつまるって、完全閉塞や高度狭窄のことを言ってるのでしょうか?確かに完全閉塞を起こしていても、血流は反対側の頸動脈や椎骨動脈で補い安定化する場合もあります。当院では高度狭窄の症例を見ても、完全閉塞をおこした症例を見たことはありません。おそらく狭窄の度合いについて言っているのでしょう。

 今回は、この狭窄の話がメインになっています。頸動脈超音波検査において、プラーク(血管内皮にでぎたゴミ)による狭窄の度合いを調べることは極めて重要で、一般に狭窄率何パーセントと具体的な数字で表します。狭窄率の算出には3種類の方法があり、ECST法、NASET法、AREA法があげられます。実際に血管は3次元の立体で、超音波画像は超音波ビームでスライスされた血管断面を2次元で描出します。なので、スライスする方向により全く見え方が変わってしまいます。赤い線の様に血管を長軸方向にスライスしたのが左下の図で、青い線の様に短軸でスライスしたのが右下の図です。いずれも、血管内腔は、プラークによりいびつになっています。

江口さん



そこで3種類の狭窄率の算出を使い分けます。
①ECST法(European Carotid Surgery Trial)
長軸方向にスライスし、狭窄部位の外径内径差の比率から算出します。

江口さん2



②NASCET法(North American Symptomatic Carotid Endarterectomy Trial)
長軸方向にスライスし、非狭窄部位内径と狭窄部位内径差の比率から算出します。国内では最もポピュラーな何出法です。血管造影の狭窄率に対応し、外科的治療の指標となります。また内頸動脈適応しますが、遠位側の描出が困難なことが多いです。

江口さん3

③AREA法
短軸方向にスライスし、狭窄部位の外径内径面積差の比率から算出します。立体的把握ができ、内腔不整形な血管に有用です。ただし、PSV(収縮期最大血流速度)の計測は不可能です。
しかし実際の検査では、①と②の図のように長軸断面の真下にプラークがあるとは限りません。長軸断面の血管側面にプラークがあったり、頸動脈球部の様に外径が一定でない時、またはプラークが存在するが内径が一定の時はAREA法を用います。

江口さん4

3種類の方法で正しい位置で垂直に計測するのはかなりの経験を要しますが、正しく測定できたとしても、それぞれの計測値は異なります。


一般にECST法で50%の時AREA法で75%、狭窄部位のPSVが150cm/secの時NASCET法で50%以上の狭窄が疑われます。3種類の狭窄率とPSVのバランスが異常な場合、いずれかが過大評価または過小評価していると考えられます。MRIは超音波検査の結果より再現性に優れるとよく言われますが、唯一流速測定できるのが超音波検査です。また微弱な血流をリアルタイムに検知できるのも超音波検査です。狭窄率の測定も重要ですが、PSVの測定を正確に行うことにより、超音波検査の再現性向上に寄与できると考えております。
 最後に、私なりに考えてる事。再現性良くするためだからといって、以前の所見を見すぎない事。当然フォロー中の病変を観察するのは重要なのですが、新しくできた病変を見落とす原因になりかねないのです。また、余計な先入観も生まれます。先入観ほど恐ろしいものはありません。

 

 

★内科専門医による総合医療、全人的医療を提供している仁愛堂クリニックです。総武線平井駅から徒歩4分と近いので、是非ご来院下さい。

 

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