仁クリブログ

2023.06.10更新

【飛沫感染と空気感染について】

 

昨今の新型コロナウィルス感染症や季節性インフルエンザ感染症にて手洗い・うがい、マスク装着によりある程度の予防になることは周知されていると思います。しかし、一般的なマスク装着だけでは予防できない感染症も存在します。今回、特にマスク装着だけで予防しきれない空気感染について説明したいと思います。

 

【飛沫と飛沫核】
飛沫感染と空気感染の違いについて説明する前に飛沫と飛沫核について理解しておくことが重要です。
例えば誰かがくしゃみや咳をすると唾液等の水分を多く含んだ粒子が飛散します。粒子の大きさはおよそ5~100μmとされています。この粒子を飛沫といいます。
そして飛散した飛沫の水分が蒸発したさらに小さな粒子も飛散します。この粒子の大きさは4μm以下です。この粒子を飛沫核といいます。飛沫核はサイズによってエアロゾルと呼ばれることもあります。
60 μmを超える大きな飛沫は、通常の呼吸(<1 m/s)では感染者から0.5 m以内、話す場合(<5 m/s)には1 m以内、咳をする場合(<10 m/s)には2 m以内、くしゃみをする場合(20–50 m/s)には3–6 m以内で、重力沈降で床面に沈着して気中からなくなるもしくは水分が蒸発して飛沫核になるとされています

 

江口さん

 

 

【飛沫感染と空気感染】
 以上の説明をみて、どれが飛沫感染か空気感染か想像ついたと思います。飛沫を吸い込んだ感染を飛沫感染、空気中を長く漂う飛沫核を吸い込んだ感染を空気感染といいます。

ここから、しばらく新型コロナウィルスの感染経路についてお話しします。
 
今年5月8日より5類感染症となった新型コロナウィルスですが、昨年より海外にて感染経路は二転三転していました。
当初は新型コロナウィルス感染症が飛沫感染や接触感染により起こるとされてきました。しかし昨年3月WHOでは気管挿管など医療行為が行われる「特定の状況や環境」に限って空気感染が起こりうると発表。一般的な経路とはせず、公式ツイッターで「新型コロナ感染症は空気感染ではない」とはっきり否定していました。
同7月に「エアロゾル感染が発生する可能性は否定できない」としましたが、「混雑して換気が不十分な屋内で、感染者と長時間、短い距離で接する状況ならば」と条件をつけていました。
1年以上たった今年4月末、ウェブ上のQ&Aを更新。ウイルスはくしゃみや呼吸のときに口や鼻から出る粒子で広がるとし、この粒子は「大きな飛沫から小さなエアロゾルまで様々」と明記しました。エアロゾルも一般的な経路の一つと認めています。
米疾病対策センター(CDC)も、見解を二転三転しました。現在は解説サイトで、主要な感染経路の一つとして、「エアロゾル粒子を含む空気を吸い込むこと」を挙げています。
英政府のウェブサイトには、「空気感染はウイルスが広がるうえでの、とても重要な方法です」とされています。
国内においても飛沫中の新型コロナウイルスについては、<1 μmの液滴では検出されず、1~4μmで>4 μmより高いもしくは同等だったという報告が挙げられました。

 

【空気感染】
 新型コロナウィルスではエアロゾル感染という言葉を使いましたが、ここで空気感染という言葉を使います。
 空気感染で起こりえる感染症は一般的に麻疹(はしか)、結核菌、水痘、ノロウィルス(食毒処理が不十分な場合)等が挙げられます。
 特に麻疹の感染力は非常に高く一般のマスクではほぼ防げず、新型コロナウィルスの感染力の6~10倍とされています。ワクチン未接種で免疫耐性がないとその空間にいるだけでほぼ感染するともいわれます。換気もさることながら対策はワクチン接種が最も有効とされています。
 また結核菌。戦時中よりも格段に死亡率が激減しているものの、なかなか0にはなっていません。志望者の8割以上は戦時中を経験した高齢者です。戦時中感染し発症、治療が不完全だと肺の奥で潜伏し免疫抵抗力が落ちた際いっきに再度暴れます。大昔では、結核菌感染者いた病室では目張りしホルマリンを散布していた時代がありましたが今そのようなことしている病院はありません。空気感染なのでまったく意味がなく、とにかく数時間の換気で対処します。マスクもN95マスクも用います。結核菌の培養検査も特殊です。一般的な細菌培養は長くても3日ほどですが、結核菌は液体培地で6週間、小川培地で8週間かかります。TB-MAC PCR方では最短翌日には有無がわかり非定形抗酸菌か結核菌か鑑別できますが薬剤感受性試験を行うと更に小川培地で8週間増菌するので非常に時間がかかります。近年では多剤耐性型結核菌も増加し古くて新しい感染症として危惧されています。

 

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