当クリニックでは超音波検査で頸動脈エコーを多く行いますが、患者様の中では初めて行う・又は初めて耳にする方も多いと思います。
実際に、この検査について患者様からご質問を頂きます。
主なご質問として
⦁ これは何の検査ですか?
⦁ この検査で何がわかりますか?
⦁ 最近首や肩が痛いんですが関係ありますか?
⦁ この、シュッシュッって音は血液の音ですか?
・・・・など。
なので、今回は頸動脈エコーについてできるだけわかりやすくお話ししたいと思います。
⦁ この検査は何ですか?
私たちの心臓から栄養分の富んだ血液は全身に運ばれ、中でも脳に行く道路(動脈)はとても重要です。
この、心臓と脳を繋ぐ首にある動脈、頸動脈と血液の流れを詳しく調べる検査です。
↑頸動脈は左右の首の、ちょうど青筋の奥に存在します。上の図の赤く囲んだあたりを観察します。右の図はエコーで実際見ている画像です。横に伸びでいる黒い管腔が頸動脈です。
⦁ この検査で何がわかりますか?
この検査によって血管の中身を詳しく観察し、血管の動脈硬化の有無や程度、進み具合を調べることが主な目的です。
加齢や血管の硬化性変化により、血管の壁にプラークというゴミが出来てしまいます。
小さなプラークでしたら血液の流れ方に影響はないのですが、大きくなりすぎると流れ方に影響が出てしまいます。たとえるなら、高速道路での事故渋滞、電車の振り替え輸送のように。
血管の動脈硬化について少しふれましたが、頸動脈の動脈硬化は全身の血管の動脈硬化を反映するとされてます。つまりは心臓・脳の血管も反映し、特に脳動脈瘤や脳梗塞の疾患に対し大きな危険因子とされています。
↑上の写真は、同じく頸動脈の一部を撮った写真です。緑の2つの点の部分、他より少し厚くなってますね。この盛り上がった部分がプラークといいます。通常厚さは1㎜以下とされてますが、1.3㎜と計測されています。
↑さらにわかりやすいように色をつけてみました。青や一部赤い色のついた範囲が血液が流れているところです。
⦁ 最近首や肩が痛いんですが関係がありますか?
率直に申し上げますと、エコー検査で肩こりや頸椎の状態はほとんどわかりません。
まあ今後、エコーの機器性能が著しく向上しMRI並みに頸椎の内部まで観察できる日が来るかもしれませんね。
⦁ この、シュッシュッって音は血液の音ですか?
えー、非常に似ていて非なるものですね。
簡単に申し上げますと、血液の速度変化を音で表現したものです。血流そのものの音でないのですが音質は違いますがリズムは同じかと思います。
少し難しい話ですが、頸動脈内の血行動態を調べるのにパルスドップラー法を用いります。これにより血液の流速がわかり、血液が血管壁をかすめる際の抵抗性(流れやすさ)、逆流の有無がわかります。もう少し難しい話ですが、血液が探触子(マイクのようなもの)に近づいてくる速度が加速しているとき高い音、逆に減速すると低い音になっています。これを経時的に聴くとシュッシュって音に聞こえます。
↑実際流速を測ってみました。下の写真はの写真の部位よりやや頭側(脳側)です。最大流速はPSVとして表されています。上は約84.0cm/sec、下は約72.2cm/secと計測されてます。さらに血液の流れやすさ(血管内抵抗性)はRIとして表されています。この値が小さいほど血管内の抵抗性が小さく(=流れやすい)となります。下は脳側に近く直接脳に行く血管です。下は上より最大流速やや遅いもののRI値が小さく血液が流れやすくなっているなっていることがわかります。これは直接脳に行く血管なので、もし急に血圧下がっても脳へ安定して血液を供給させるためだといわれてます。いずれの計測値も正常範囲です。
最後に・・・
頸動脈エコー検査において、患者様の病態や加齢によって少しずつ初見が変化していきます。特に糖尿病や高脂血症など動脈硬化を起こしやすい代謝性疾患において、長期的な経過観察が有用とされています。
後半、少し難しい話になってしまいましたが、少しでも頸動脈エコー検査について興味を持っていただけたら幸いです。